ロンドン日記

黒猫と子狐

仲の悪い動物と言えば犬と猿。犬と猫も仲が良くないとされている。犬と狐も相性が悪い。では猫と狐はどうだろうか。

住んでいるロンドンの住宅街には、多くの飼い猫がいて、大体どの時間でも数匹は外に出ている。以前テレビ番組が、縄張り意識の強い猫がどうして共存できるのか調査したところ、出会い頭に喧嘩にならないように同じ場所を違う時間、つまり交代制で見回っているという説に至っていた。

ペットである猫や犬の他に、野生動物では狐をよく見かける。人間を見ると、通常は全く音を立てずにいかにも軽い足取りで素早く去ってゆく。

先日、午後9時を過ぎて帰宅したところ、この時間には大抵外にいる黒猫が、玄関の近くに泰然と座っていた。貫禄があると言うべきか、非常に落ち着いていて、この辺りのボス猫ではなかろうか。どうもこの猫は気まぐれで、通りかかると、時には擦り寄ってくるが、時には「シャー」と威嚇してくる。

この晩、外にいたのは、猫だけではなかった。好奇心旺盛と思われる狐が、猫を周りを忙しく移動していた。この狐は、生まれたばかりではないが、大きさからして、成獣ではない。成獣の狐は特に可愛らしいとは思わないが、このような子狐は可愛いと思う。一方、猫は何事もなかったように動じない。子狐は猫に近づいてはやや遠のき、何やら猫という動物に興味を引かれた模様。お互いに威嚇することも攻撃することもなかった。この子狐は比較的近くにいた私に対しても、あまり警戒心を持っていなかったようだ。

夜で暗く、写りは良くないが、上の写真で少しでも雰囲気が伝われば良いのだが⋯⋯。

どれだけの時間、このような駆け引きがあったのかわからないが、写真を撮り始めてからしばらく経つと、子狐は裏にあるだろう狐塚に帰っていった。何とも微笑ましい一場面だった。