ロンドン日記

ティーポット

いつの間にか、朝晩が寒くなる秋となってしまった。でも寒くなったと思った途端、妙に生暖かい日がここ最近数日あって、風邪をこじらせてしまい、すっかり体調を崩してしまった。ここ数週間はあれこれ結構忙しく、このサイトを顧みる時間も精神的余裕もなかった。ニュースもいろいろあって、書こうと思ったこともあるのだが、ゆっくり座って考えることもできなかった。

英国の秋はなんとなく憂鬱である。葉は落ちるが、きれいな紅葉になるのではなく、黄葉、それも黄金色あるいは鮮やかな黄色になるのではなく、茶色になってひらひら落ちていく。日に日に夜が長くなり、そのうち、朝起きても暗く、午後4時を過ぎれば再び暗くなる。そしていくら生暖かい日があったとしても、だんだんと寒くなっていくだろう。どう表現すればよいだろうか、ロンドンの秋冬の寒さはいやらしい。いくら重ね着をしても骨の髄まで冷える湿った寒さなのだ。

この季節になると、春夏以上に大量のお茶を消費する。朝の最初の一杯はコーヒーだが、その後はできるだけコーヒーを避けている。午前から午後にかけては、紅茶や緑茶などカフェインの入っている茶類、そして夕方から夜にはハーブ・ティーを飲むようにしている。しがない中年男がハーブ・ティーというのも、あまり絵にならないが⋯⋯。以前は一日中コーヒーを飲んでいたのに、もう老化現象が始まっているのか、夜にカフェイン入りの飲料を飲むと、眠れなくなってきたのが理由。

英国では電気ケトルが一般的。沸かした湯を保温する電気ポットは見たことがない。いちいち一杯一杯湯を沸かすのも面倒なので、少し冷めて温くなってしまうが、大きなティーポットにマグカップ数杯分作って、継ぎ足しながら飲む。気に入っていたティーポットはこの素焼きのティーポット。

「気に入っていた」ティーポットと過去形になっているのは、晩夏でまだ暖かった頃、不注意で落として割ってしまったから。だんだんと夜が長くなってきたので、どこで良いティーポットはないかと物色していたら、数週間前、ロンドンの街中にあった TK Maxx の一店舗で、ちょうど良いのを見つけた。ル・クルーゼの重厚感あるティーポット。

この TK Maxx という店は、北米では TJ Maxx という名前で展開していて、主にブランド衣料品が安く販売されているところ。昨シーズンの衣服や余剰在庫だろうか。店によっては衣類だけではなく、日用雑貨や化粧品や装飾品も販売している。それでも、なんとなくル・クルーゼは場違いのような気がしないでもないが、定価£39が£12.99になっていたので、買ってしまった。安いティーポットならいくらでもあるだろうが、少し良いものであれば、£10は軽く超えてしまう。さすがに£39だったら躊躇するが、この値段だったら特に悩むことでもなかった。

そして、ル・クルーゼだと、すぐに「鍋」と思い浮かべるのだが、実にいろいろなものを作っていることを初めて知った。近くにル・クルーゼ直営店があるのだが、店頭にある商品の値段をショーウィンドウ越しに見ると、尻込みをして入りづらい。これから TK Maxx で、他のル・クルーゼ製品を探してみようか。でも、ハーブ・ティーを愛飲しル・クルーゼを買い漁るしがない中年男は、本当に絵にならない。