ロンドン日記

目つきの鋭い豚の置物

世の中には美味いものがたくさんある。イベリコ豚の生ハムもそんな美味珍味のひとつで高価な食品。スペイン・マドリードを訪れた時の鮮烈な思い出に、生ハムが幾多もぶら下がっていた肉屋が挙げられる。酒池ではなかったかもしれないが、まさに肉林だった。

大都市には世界中から人と物が集まる。もちろん食べ物も。ロンドンに数軒の店舗を構える Casa Manolo は、イベリコ豚の生ハムなどスペインの特産品を売っているし、バルのようにワインやタパスなど軽食も提供している。ストランドという目抜き通りにある店舗の外に、マスコットだろうか、いかにも獰猛な目つきをした豚の置物がどっしりと構えていた。風で吹き飛ばされるほど軽いわけでもないから、酔った大学生が悪ふざけで盗むのを防ぐためだろうか、鎖で厳重に固定されていた。この豚の置物の鋭い目を見て、もし生命が吹き込まれてこっちに突進してきたら大変なことになるな、そのための鎖か、と変なことを空想した。