目抜き通りのオックスフォード・ストリートの北側、地下鉄ボンド・ストリート駅とマーブル・アーチ駅の間にあるのが Selfridges というロンドンの老舗デパート。高級デパートとはあまり縁のない生活だが、一週間程前の夕方、友人と近くの喫茶店で会って、その後に一緒に散歩がてら Selfridges の食品売り場を見物しようということになった。見物というのは、何かを買い求めるというよりも、どのようなものがどれだけ高い値段で売られているか、興味半分怖いもの見たさ半分で見て回ること。高くていかにも美味そうな食材もあれば、どうしたらそんな値段になるのか、完全に謎でしかない食べ物も。
パン屋を覗くと⋯⋯75%OFFという表示が。パンが数種類見切りで安くなっていて、その中にチャバッタもあった。チャバッタはイタリアのパンで、1982年に当時サンドイッチで人気を博していたフランスのバゲットに対抗するために、イタリアのパン職人が開発したという。イタリア語で「スリッパ」という意味で平べったいパン。800グラムという大きなチャバッタの定価は£3.79で、決して高いわけではない。例えばスーパーの Waitrose や Sainsbury’s で、270グラムのチャバッタが£1.70なのだから。でもこの800グラムのチャバッタは£3.79から75%引きになって、94ペンス。
Selfridges のブランド・カラーの黄色い紙袋をぶら下げて、夜の8時を過ぎてもまだ買い物客で溢れるオックスフォード・ストリートを歩いていると、なんともこそばゆい。装飾品など小さくても非常に高価な物を同じ大きさの紙袋に入れて歩いている人もいるだろうが、私の袋に入っているのは一本のパン。£1に満たない買い物でこのような立派な袋を貰うのは、どうも悪いような気が⋯⋯。
私に糖質制限ダイエットは無理だろう。炭水化物が好きで、米だろうとパンだろうと、結構な量を消費する。この800グラムのチャバッタは、一晩で食べるには無理な量だったが、翌日と翌々日に分けて食べきった。さすがに3日目になって、やや固くなったが、それでもオリーブ油を付けて食べれば美味。パンの味は皮にあり。個人的に厚めで硬めのパンの皮が好みなので、このチャバッタは非常に良かった。また他社のチャバッタだと大きな気泡があるのだが、このパンの場合小さな気泡があってモチモチ感があった。