4月27日にウィンブルドン・コモンを散歩していたら、スマートフォンにメッセージが届いた。英国の国民保健サービス・NHS (National Health Service) が送信者。
英国における新型コロナウイルス感染症のワクチン接種対象者は、基本的に高齢者から年齢順にだんだん下がっていた。いつ40歳以上になるか同年代の友人知人との会話で必ず話題に。メッセージは、年齢的にワクチン接種対象者になったので、専用ウェブサイトで予約するようにという内容。散歩から帰ったらすぐさまコンピューターで予約ウェブサイトに。NHS番号と名前や生年月日の個人情報を打ち込んだら、ワクチン接種の場所と日時を選べた。近いところにはなく、どこも大体2.5㎞くらい離れていた。公共交通機関ではなく歩くつもりだったので、知っている所が良く、一番近い病院かショッピング・センターかで数分迷ったが、何回も歩いて行ったことがあり道順を知っているショッピング・センターにした。ついでに買い物もできる。1回目の接種の予約時間は1週間後の5月4日午前11時35分。同時に2回目の予約もできて、7月20日を選んだ。予約番号はSMSとメールで送られてきた。
SMSを受信した3日後の4月30日にNHSからワクチン接種を促す手紙が届いた。すでに予約している場合は無視して良いと書いてあった。SMSに手紙と通知はきちんとしていた。NHSは主に税金によって賄われている公共の医療制度で、受診や治療は基本的に無料。英国の「ゆりかごから墓場まで」の社会保障制度の主柱をなしている。
ワクチンを1回打ったからすぐに何か変わるわけではないし、高い予防効果を期待するには2回打たないといけないが、安心材料になる。1週間結構待ち遠しかった。風は強いが晴れ間がのぞく5月4日の朝、やや時間に余裕を持たせると45分くらいはかかると計算し、更に万全を期すため予約時間の1時間前に出発。4月末の時点ではまだまだ不確定で、今年は開催されるだろうか、もしそうだとしたら有観客だろうか、などと思いを巡らしながら、ウィンブルドンのテニス会場の横を通り、坂を上り下り、20分前に着いた。ウィンブルドンに行ったのは恐らく1年半ぶり。空いた店舗が目立つ。英国の欧州連合離脱と新型コロナウイルス感染症で、体力のない会社はどんどん事業を縮小したり撤退したり潰れたりしている。
ウィンブルドンのショッピング・センターの1店舗をワクチン接種センターとして利用していた。行列に並ぶとタブレット端末を持った係員が予約番号と名前を訊いてきた。英国のことだから、予約がなくても行列ができていれば「何か良いことがあるかもしれない」と加わる人もいるかもしれない。そしてワクチン接種センター内に入って並ぶこと数十分、受付に辿り着いた。再び予約番号を伝え、氏名・生年月日・住所などを確認。更に並んだ後、ワクチン接種に関して問診を受けた。まずワクチンは AstraZeneca のものと告げられた。ワクチンの副反応として、痛みや倦怠感や風邪のような症状が1週間程続くこともあると説明を受けた。水分補給も怠ってはならないとのこと。また列に並ぶこと10分ほど、注射の時間になった。注射が好きという人は多くないだろう。幼い頃は注射が怖かったし痛かったが、最近の注射は痛くなくなったような気がする。注射針が改良されたのか、鈍感になったのか、看護師が上手だったのか、どうなのだろう。
買い物を済ませ、俄雨に降られながらもゆっくり帰宅。最初の24時間は痛くも痒くもなかった。ただ久しぶりにウィンブルドンまで歩いて往復したので、やや疲れた。丸1日経ったあと、注射を打った左腕が痛くなった。ひどい痛みではなく、鎮痛薬を服用するほどでもなかったが、凝ったというか硬くなった。そんな状況が数日続いた。ずっと腕が重いように思えた。5日経って腕の硬さ重さはなくなったが、疲れがなかなか取れなかった。頭も普段以上にぼーっとしていた。同じくワクチンを接種した友人知人に訊ねてみると、副反応に幅広い個人差があった。副反応がほとんどなかった人もいれば、接種後48時間は何も手に付かないほどぐったり疲れてずっと寝ていた人も。私の副反応のは悪くも軽くもなく、話の種にもならないようなものだった。
1回目のワクチン接種からおよそ2ヶ月経った7月初旬⋯⋯2回目の接種が前倒しできるという通知がメールで届いた。最初の数日は枠がなかったが、7月6日に確認したら、翌7日に接種可能だったので、予約した。前回と同じウィンブルドンのショッピング・センター。今回は天気が良くなく、時間に余裕がなかったため、1年数カ月ぶりに地下鉄に乗った。駅はちょうどウィンブルドンのテニス会場に向かう人々でごった返していたが、地下鉄の乗客はまばらだった。流れは1回目同様に予約番号の確認・個人情報の確認・問診・注射の順だったが、行列がなく15分もしないうちに全てが終わって、ちょっと拍子抜けした。1回目にあった副反応はなかった。2回接種して2週間経てば免疫がついて、非常に高い発症予防効果が望まれる。7月7日が2回目の接種だったので7月21日。無論100%の予防効果があるわけではないが、一個人としてはこれ以上のことはできない。
イングランドでは7月19日に新型コロナウイルス感染症関連の制限の解除が行われる。全面解除に等しい。現在英国ではデルタ株が蔓延し、新規感染者数が連日3万人を超えていて、今後更に増える試算だが、病院搬送者数や重症患者数や死者数の増加率が以前の第1〜3波に比べると低いので、医療崩壊は起きないと英国政府はある種の賭けに出た。7月11日現在、英国の成人(18歳以上)人口のうち、87.2%がワクチンを1回接種していて、66.2%が2回接種している。もう数週間経てば、2回接種の率が高くなるので、その時点まで待つべきだという慎重論もあった。政府の判断が吉と出るか凶と出るか、今月末に明らかになるだろう。