ロンドン日記

年越しそば・鯛・数の子のようなもの

2022年が終わり、2023年が始まった。年の瀬も年始も特別感なく過ぎた。ただし「らしい」ものは食べた。クリスマスに七面鳥を焼き、大晦日に有機栽培の信州産そばとモロッコ産ネギを買って⋯⋯

形ばかりに年越しそばを食べた。薬味はネギだけで十分。面倒だったので。

明けて元旦、ネギを買ったスーパーで見つけた鯛 (sea bream) を調理した。内蔵と鱗はすでに取られていたので、焼くだけ。おせちはともかく餅くらいはロンドン中心部に行ったときに買えばよかったと後悔。

一応尾頭付き。鯛と言えば、子供の頃の正月、北海道の祖母の家でテレビで時代劇を観ながら食べていたら、骨が喉に刺さって大変なことになった。民間療法でご飯を丸飲みすればよいというので、試みたところ却って骨が更に奥深く刺さってしまい、結局医者に行って抜いてもらうという騒動に。それ以来、鯛や太い骨がある魚を食べるときは、骨に神経質なほど注意している。あの頃、テレビの正月番組として長編時代劇が定番だったが、今は違うだろうか。

縁起物の好物は数の子。独身の中年男が子孫繁栄を願うものを食べることのおかしさはさておき、かなり前に思える2022年12月20日に何気なく鮮魚コーナーを物色していたら、ニシンがあった。

もし卵巣があれば数の子を作れるのではないか、という料理が不得手な人間にしては無謀な計画を思いついた。塩に漬け、塩を抜き、薄皮を取り、味付けをする、という大まかな工程を大雑把に理解して、適当に行った結果、いつも以上に見苦しい写真になるが⋯⋯

数の子のようなものができた。作るのに成功したか失敗したかと問われたら、間違いなく失敗。自己責任で食べたところ、味は数の子の旨味があって数の子なのだが、食感はとびっこ似。つまりこりこりではなくぷちぷち。数の子のようで数の子でない、とびっこのようでとびっこでない、それは何かとたずねたら⋯⋯何だろう。食べてから丸2日経って、腹を壊して雪隠に駆けていく必要はなかったので、少なくとも腐ってはいなかった。それとも胃が丈夫なのだろうか。どこかで塩梅というか塩加減を間違えた。いずれまた挑戦してみよう。

完全な余談になるが、2022年12月20日に買ったニシン4尾を一人で消費するのは結構大変だった。卵巣を取り出した後、2尾は塩焼きにしてレモン汁とオリーブ油をかけて食べて、残りの2尾は翌晩に和風の煮付けにした。こう写真で見ると、大根おろしがあったらなと思ってしまう。英国のスーパーでときに大根を売っているところがあるが、なかったとしてもラディッシュと玉ねぎを少し酢に漬けて代用できたはず。料理をするといつもどこかで何かが欠けている。

これまで「身体は中年、胃と心は老爺」などと半ば自嘲していたが、煮魚が一番美味く感じるようになったら、もはや笑い事にもならない。近々脂っこいステーキでも食べようか。