先日、窓の外を何気なく見ていたら、いつものように枝にリスがいた。ナンに見える大きなパン一切れを大切に抱えて齧っていた。
近隣住民の誰かがハトやモリバトなどの鳥やリスに餌としてほぼ毎日パンやピザをベランダから放り投げている。この件について役所から度々注意というか警告が回ってきているのだが、一向に止む気配がない。ハトの糞害やネズミやキツネの増殖に繋がるので、あまり良いことではないし、ギーたっぷりのナンなんか食べたら動物の体に悪そうだ。私は小鳥に餌をやっているが、ハトの対策に苦労した。
ハトが来ようが他のリスが来ようが、このリスは自分のナンを絶対に手放さないぞという気迫があった。
枝のリスの観察をしていたら、急にばさばさとハトが何羽も同時に飛び立つ音が聞こえた。何事かと地面に視線を移すと、猫が突進していて、リスを捕まえていた。
リスは痛々しい声を上げていて、万事休すと思われたが、猫は仕留めずにリスを離した。リスは首と背中に手傷を負ったものの、自力で木を登れたので、難を逃れて九死に一生を得たようだ。
枝にいたリスはというと、ナンを咥えたまま、へばりつくようにしてずっと警戒音を発していた。
2021年の7月に似たようなことを目撃した。その時のリスは今回のリスほど幸運ではなかった。
猫に襲われ、リスはほとんど動けなくなっていた。猫は一度リスをその場に放置したが、数十秒後、戻ってきた、リスの周りを何かをすることもなくぐるぐる回っていた。リスはうずくまるのがやっと。
やがて猫は再び去っていった。リスはまだ息があったが、とても助からないのは明らかだった。動物愛護団体に連絡したところでどうにもならなかったし、このリスは外来種のトウブハイイロリスで放すのは違法なため、助かる見込みがあったとしても安楽死させられる確率が高かった。数分後、黒い目に宿っていた生気が完全に消えた。他のリスが一瞬近づいてきたが、その後は何もなかったかのように離れていった。
数時間後には跡形もなくなっていた。肉食や雑食の野生動物が多くいる。カササギやカラスなどの鳥かキツネかが持ち去ったのだろうか。スケールは小さいが、まるでテレビの動物ドキュメンタリー番組の一場面を見たような気持ちになった。