別にやらなくてもよいし、やったとしてもいろいろと端折って形だけだが、ここ数年大晦日最後の食事として蕎麦、そして元旦に鯛 (sea bream) を食べている。おせちもなければ、餅や雑煮も食べす、屠蘇も飲まず、どこかに初詣にも行くわけでもない。他に正月らしいことは全くしないが鯛だけ食べる。儀式というのは、頭で考えれば必要のない行わくてもよいものだが、行わないと何かむずむずするというか気持ち悪いというか漠然とした不安を覚える。私の場合、鯛は食べなくても恐らく大丈夫だが、年越し蕎麦は食べないと。
大晦日、病院に採血に行った後、いつものようにスーパーを数軒はしごした。まず高級スーパーに分類される Waitrose で蕎麦を手に入れた。信州産の十割蕎麦。有機栽培の蕎麦粉を使用。この蕎麦は以前にも買ったことがあり、非常に美味いが、それなりの値段がする。£4.50。隣に蕎麦粉15%の「蕎麦」が£1.50で売られていたが、ここは奮発した。
ちょうど良い食器がなく、すり鉢を使っているのはご愛嬌ということで⋯⋯。
次に鯛。蕎麦を買った Waitrose で、パックに入った三枚おろしの身の部分はあったが、尾頭付きが欲しかったので、大手スーパーの Morrisons の鮮魚カウンターを物色したら、最後の一尾が氷の上にちょこんと残っていた。目が透明で澄んでいて、悪くはなさそうだったので買った。鱗と内臓が取り除かれて下処理は済んでいたので楽。£3.50。地中海で養殖されたものだろうか。蕎麦より安い。
袋に入れたまま調理できたらしいが、どのような焼き上がり具合になるのかちょっと想像できなかったので、取り出していつものように焼いた。塩をふりかけただけ。鯛は鯛。美味い。
食べ終わったら、残った頭と骨を醤油・みりん・和風だしの素で煮込んだ。煮凝りを作ろうと思って。一人暮らしで自分が食べた分なのでできる使いまわし。鍋に入れてぐつぐつ。他の事に気を取られて時間が経過してしまい、想定以上に蒸発してしまった。煮汁を冷蔵庫で冷ましたところ、ちゃんと固まったが、味が濃かった。
翌日、どうやって食べようかと、何も思いつかないまま冷蔵庫を開けたら豆腐があった。数日前に Sainsbury’s というスーパーで買った super firm tofu で、名前の通り固い。木綿豆腐より遥かに固い。そして大豆の風味はどこへ行ってしまったのだろうか、にがりの味なのか結構苦い。煮れば他の食材の味が染みてさほど悪くはないのだが、冷奴だと⋯⋯。でもこの日は冷奴の気分というか、何か調理するのが億劫になっていた。豆腐の上に煮凝りと生姜を乗せたところ、まあまあだった。
蕎麦と鯛を食べて、無事に年を越して新年を迎えたような気分になった。