先日パリからブリュッセルに「戻って」きた。パリには3日間いたのだが、目的はオペラ鑑賞だった。本当は行くはずではなかったのだが、券が余り、いわば代打。
パリ・オペラ座は Opéra Garnier と Opéra Bastille と2カ所ある。「オペラ座の怪人」が住んでいたのは歴史の長い Garnier の方で、Bastille はフランス革命のときに襲撃された要塞兼牢獄があった場所に、1989年に完成し、現在オペラはほとんどこちらのバスティーユ歌劇場で上演される。現代建築で、大きく開放感のある造りで、天井が高い。ニューヨークのメトロポリタン・オペラに比べると一回り小さいが、音響効果は素晴らしく、舞台は大きい。
鑑賞するのはプッチーニ作『蝶々夫人』でバルコニー席に座る。高い所から舞台全体とオーケストラが見える。オペラ鑑賞の楽しみは人それぞれだと思う。特定のオペラ歌手が好き、あの作曲家が一番、やっぱりこのオーケストラではなくては、この指揮者でなければ、それぞれある。聴覚と視覚を刺激し、体で音楽と声を感じることができるので、好きな芸術だ。
音楽を勉強した身ではないので、何とも言えないが、蝶々夫人は蝶々さん役のソプラノとオーケストラを酷使するように思えてならない。大きな歌劇場にもかかわらず、蝶々さん(Cheryl Barker 氏)の美しい声が響いた。オペラ好きの中には豪勢な舞台演出も必要と思うと人がいるかもしれない。そうだったら、残念に思われるだろう、とてもシンプルなデザインの舞台だった。そして舞台後方にあるスクリーンに色を投影することによって、時間や感情を現した。そして一挙一動に動と静がしっかり区別されていて、能の要素を取り入れたように見えた。
印象に残るオペラだった。