時刻表
04:34
グライフスヴァルド発
UBB24034
04:59
シュトラルズンド着
05:30
シュトラルズンド発
IC2289
08:19
ハンブルク着
09:25
ハンブルク発
EC33
14:05
コペンハーゲン着
14:23
コペンハーゲン発
R1062
15:50
ヘルシンボリ着
あるきっかけでスウェーデン・ヘルシンボリ(発音はヘルシンボーリの方が近いよう)で開かれる学会に出席することになった。そしてコペンハーゲンに数日間滞在する事も決まり、またスウェーデンとデンマークの間には友人の結婚式に出るためにイギリスに戻らなければならないと、我ながら「かなり多忙になる」と思う。さて、この学会はあまり自分の研究とは関係のない分野だが、視野はなるべく広げるというのは専門バカにならないためには必要だろう、と勝手な理由付けをした。
電車好きなので、今回も飛行機に頼らずに行く事にしたところ、11時間程かかり、朝4時起床となる。つまり、夜型の人間にしてみれば、ようやく寝付いた時間に起き上がらなければならないということが分かった。乗り物で眠る事は稀なので、なんとか頑張らなければと思ったためか、就寝しようとしてもできず、結局危惧したとおりに寝不足状態。電車好きといっても、電車に乗るためだけにどこかに行くということは子供の頃親にねだったこともあるが、今はそうではなくどこかに行くときにもし鉄道という選択肢があれば列車にするということ。
夏期のヨーロッパの朝は早く、6月2日午前4時少し前に起きた時にはすでに小鳥のさえずりが聞こえ、空が明るくなりつつある頃。雨が降っていたようで、地面はぬれていた。スーツケースをごろごろ、でもなるべく音をたてないように駅まで引いて行く。朝4時台、それも土曜日に人が待っているかどうか、と思っていたのだが、ちらほらと人影があった。でも私のようにシュトラルズンドに行く人は少なく、数分後に来るベルリン方面行の電車を待っていたよう。4両編成のディーゼル車があの独特の匂いとともに到着する。私は先頭から2番目の車両では唯一の乗客。人の良さそうな車掌も暇そうなので、このヘルシンボリまでどれくらい時間がかかるのか、などといろいろ尋ねてきた。グライフスヴァルドからシュトラルズンドまで約25分で到着し、次のハンブルク行の電車まで30分ある。駅のスーパー兼喫茶店でコーヒーを飲み、時間を潰す。やはりこの時間ではあまり電車に乗る人も多くないのだろう、列車全体ががらんとしている。ドイツの最北東部とも言えるシュトラルズンドからハンブルクまではメックレンブルク=フォアポンメルン州で一番の大都市のロストックと州都シュヴェリンを経由する。「丘陵地帯」と呼べばよいのか、あまり豊穣そうではない土地が起伏している。そんな車窓をぼんやりと眺めていたら、そのうちウトウト寝たり起きたりの数十分になった。
外はすっかり明るくなり、シュヴェリンを過ぎて、ベルリン・ハンブルク間の高速鉄道部分に入り、電車の走行速度もかなり上がった。土地もほぼ平になってきた。ハンブルクはやはり活気があると到着した途端思った。大きい駅だがヨーロッパに多くあるターミナル駅ではなく、進行方向の転換なく通り抜けられるようになっている。ちなみにドイツで美味い紅茶はこれまでハンブルクでしか飲んだ事が無い。ハンブルク中央駅からそう遠くないところに何軒もの同じ系列の書店があり、本好きの人間の暇つぶしに向いている。
ハンブルク・コペンハーゲン間の電車はデンマーク鉄道の車両。これまで乗ったことがなかったので、なかなか面白い。3両編成のディーゼル車。4時間40分の旅。海を数回渡るわけだから、どうなることか楽しみ。リューベック経由で海岸まで出る。ドイツのこの地方やデンマークなどは、畜産が経済にとって重要なので、牧草地に牛の姿を探した。そのあと、プットガルテンから電車ごとフェリーに乗り込み、対岸デンマーク・ロービュまで大袈裟な言い方をすれば45分程の「航海」となる。今日は霧雨で視界が悪く、空と海両方が同色。車、バス、物資輸送用のトラックもたくさんあり、船内の店や売店は大繁盛。いくら大きな船でも酔うほうなので、甲板へ行って海面を見る。そうすると、視覚感覚と体で感じる揺れが同じなので、酔わないということを耳に挟んだからだ。デンマークに渡ると地平線とは何かを如実に伝えるかのように真っ平らだ。単線の電化されていない区間が多くあり、牧草地や林が広がる。デンマークの島々を結ぶ橋を何回か渡り、コペンハーゲンに至る。15分の遅れがあり、ヘルシンボリ行の電車は待たないとのアナウンスがあり、急ぎ4番線から5番線へ走った。駅には赤と黄色のユニフォームを着ていた人がごった返していたが、サッカーのデンマーク・スウェーデン戦があるらしい。しかしこのように言葉が分からないのはやはり不便だし少々不安になる。
デンマーク・コペンハーゲンとスウェーデン・マルメを結ぶ橋を走るのは楽しみだった。天気もこちらの方がよく、海を見渡せることができ、ちょうど大型貨物船が橋を潜るところだった。車道が上で鉄道が下の橋で、かなりの速度で電車は走って行く。残念ながら、列車の窓には幾筋もの雨の跡があり、写真を撮ったところでも、あまり良く写らないだろうと思った。マルメで進行方向が変わり、検札の際の制服の違いから、車掌業務も恐らくデンマークからスウェーデンの鉄道会社に引き継がれたのだろう。マルメから大学町ルンド、ランズクルーナと通り、進行方向左側に海とデンマークが見える。北欧というと、平和や社会保障が充実された国のイメージが強いし実際そうだが、過去にはデンマークとスウェーデンはともに大国だった時期があり、何回も北欧・バルト海の主導権を握るため戦争をしていた。このヘルシンボリ一帯のスコーネ地方ももともとはデンマーク領だったが、戦争で不利な立場に陥ったデンマークが1658年にスウェーデンに割譲した。恒久的にスウェーデン領になるという保証もその時期にはなく、デンマークも領土奪回の機を窺っていたので、政策としてスウェーデン化を押し進めた場所。もう過去の話で、スポーツなどで場を除いて、デンマークとスウェーデンの関係は政府間はもちろん、一般人の間でも大変良いらしい。しかしサッカーは別らしく、このデンマーク・スウェーデン戦はデンマークのファンが主審に暴力を振るうことにより、後半44分に試合が放棄されたというから大変。
やはり今の時期の北欧の日は長い。陽が沈んだあともまだ明るく夜がなく、すぐ黎明に繋がるのような感じがする。今日6月3日はヘルシンボリの町を散歩して対岸のデンマーク・ヘルシンゴーを眺めたりした。