ロンドン五輪 | 柔道:女子57キロ級・男子73キロ級

掲載日:2012年8月8日
試合は2012年7月30日に行われた

どこかで聞き齧った話だが、目だけは誤魔化すことはできないらしい。つまり、例えば口元に微笑を浮かべていても、目が怒っているようであれば、怒っているというように。遠くからでも、目が爛々としているのが、はっきりとわかった。柔道の57キロ級の松本選手のこと。日本柔道はこの時点で苦戦中で、日本は金メダルを獲っていなかった。その重圧もあっただろうか。ちょっと前かがみの独特の歩き方に、すごい目の光。もちろん他の柔道家は、これだけで怯むことはないだろうが、他を寄せ付けない何かがあった。

男子73キロ級の銅メダルの試合が長引いたため、松本選手と決勝戦の相手のカプリオリウ選手は、会場入口のところで控えていて、長く待たされていた。松本選手は盛んに、飛び上がったり、腕を回していた。それでも途切れない集中力と眼光の鋭さ。試合中も負ける気配は、素人目だが、全くなかった。相手の反則で金メダルが決まった時、背しか見えなかったが、その確たる闘志と何者も寄せ付けない鋭さが、スーッと消えたのではないだろうか。次に表情が見えたときは、涙を拭いているようだったし、表彰台に上がるときは爽やかな笑顔で、目もそうだった。

一方、同じく行われた男子73キロ級の中矢選手は銀メダルに終わった。柔道について全くの素人だが、現在の柔道は、柔から力、技から力、つまり格闘となっているような気がする。そして、それにしても柔道は、なにやら派手な競技になっていた。けたたましい音楽はかかるし、試合場もどぎつい色が利用されていた。これはロンドン五輪だけだろうか。さて、フランスは日本よりも柔道人口が多いと言われる柔道王国。そのため、フランス人選手も多く出場していて、この日に行われた2階級で銅メダルを獲得。会場には大勢のフランス人が来場していて、その中にはオランド大統領の姿もあった。

結局、今大会、日本の柔道の金メダルは、この松本選手のみに終わった。これから日本の柔道界は、様々な批判を受けることになるだろう。次回のリオ・デ・ジャネイロ大会まで、厳しい目が向けられることになる。奮起なるか。