英国経済 | 危機的状況?

以前書いたように、私は経済というものを理解していないし、語彙もなく、わからないことだらけ。不特定多数の人間に無知と恥を曝すのは、この重要な問題について知りたいと思っているからだ。以下の列記することが悲観による誤謬であることを願ってやまず、間違いを指摘してくださる方のコメントを待っている。

英国が非常に危ないところにあることは肌身で感じている。今度の不況は世界規模で、米国や日本そして欧州各国でも銀行の貸し渋りや押し寄せる企業破綻や失業率増加で悲鳴をあげている人が多いが、その中でも英国は危機的状況にあると思っている。英国の雰囲気として漠然とした焦燥感はあるものの、まだ現実逃避しているような気がする。

まず不動産バブル。日本の経験もあるが、なぜ土地というものがそれほどまで価値あるものか、未だわからない。限られていて、よほどのことがなければ消えず、安心できる投資対象ということはわかる。英国にはあまり火山も地震もなく、崖の上の家が浸食され海に呑まれるくらい。そして住んだり耕したりすることによって何らかの価値が発生することもわかるが、なぜ投機の対象となり、価格が上昇しつづけると思われてきたのが謎。そして何の疑問も持たずに土地や家やアパートを買い続けてきた人がいるのかよくわからない。たしかに英国社会は他のヨーロッパ各国と比べて「持ち家」主義で、借家の人もいずれは自分の「城」を持ちたいと思っている。そのためここ10年程不動産価格は右肩上がりだった。「下がる訳がない」と銀行の中には不動産の査定額125%を融資してきた例もある。30を目前とし、年代的に私の友人の中にはもう家は買えないだろうと半ば諦めていたのもいるが、今心配しているのはちょっと無理をして最初の不動産を買った人たち。不動産バブルが弾けて問題となっているのは、不動産価値よりも不動産ローンの残額が多い例もあるが、他に不動産を担保にして組まれた消費ローン。米国同様あまり蓄えのない人が多く、銀行やローンやカード会社が債権回収に出ると、多くの人が影響を受ける。

財政赤字の拡大は社会保障費の増額と税収入の減額で仕方ないが、ブラウン政権は消費税減税と公共投資の両輪でこの危機から脱出しようとしている。つまり赤字は膨らむ一方ということ。減税は良いとしても、消費税減税はあまり意味がないと思っている。17.5%から15%に切り下げられたとしても、実際に価格に反映されるのは2.13%ほど。街へ行けばいたるところで「50%引き!」や「70%引き!」という張り紙が店頭にあることを思えば、2.13%は微々たる差だ。ましてや、失業という事態に現実性があったり、借金がある人が、経済を支えるために消費しなければならないというのも不可解だ。消費して破産して、国助けて人滅びるでは意味がない。消費税減税分を公共投資に投ずるべきだったと思っている。

一方公共投資も額が充分であるか定かにあらず、また経済を刺激するまでに時間がかかることが予想されている。そしてここ20年ほどの英国政府の長期的計画性のなさを鑑みれば、しっかりとした設備投資ができるかわからない。ヴィクトリア朝時代の下水道や鉄道のように、国家百年の計を立て、「最先端の技術で英国を最先進国にしよう」というような気概と自信が政府にも企業にも市民にも見受けられない。あるのは自嘲だ。

英国経済は金融とサービス業が中心だった。モノの貿易収支を見ると目を覆いたくなるほどの赤字だ。「何も作っていない」と言えば大袈裟だが、製造業が経済全体に占める割合は小さい。「英国で製造され世界中で使われているモノ」で思いつくのはせいぜい「ロールス・ロイスの飛行機用エンジン」で、紅茶(原産地インドなど)とビスケット(材料は自給)だけでは頼りない。世界金融危機で金融業が頼れなくなり、内需中心のサービス業も大変なことになっている。世界経済が盛り返さないと英国は不景気から抜け出せないのでは勘ぐる。

イングランド銀行も利下げを続け、もっと多くのカネを流通させようとするだろうが、英国だけではどうにもならないような気がする。米連邦準備会に比べると少々対応が遅れているようにも見える。英ポンドも問題の一部だ。海外から英国に戻ると常々1ポンドの購買力の低さに驚く。だから米ドルやユーロに対し下落していることはさして異常ではない。ただ、通貨が弱くなったとしても、製造業がなくこの世界的不況で外需もないので、ポンド下落の恩恵がなんなのか良くわからない。製造業の中でも原材料や部品を米ドル建て・ユーロ建てで仕入れる会社にとって、ポンドが安くなっても良い事だらけではない。せいぜい海外からの旅行者(円高・ポンド安なので英国に来るなら今!)が増えてカネを落としてくれるくらいだと思う。

政治も足を引っ張ると思われる。米国に目を向ければ、新大統領のもと大胆な政策転換を行えるが、もう10年以上政権を握っている労働党とブラウン氏では舵取りができない。確かにブラウン首相は「世界を救った」のかもしれないが、英国を救えるか手腕が問われている。そして2010年までには総選挙が行われるので、選挙を念頭に置いた政策となりそうで、党利党略と国家利益が相容れないときはどうなる心配だ。

英国は他国と似た問題を抱えているが、程度の差で見ると、一番悪いように見えてしまう。これから余波として英国社会に与える影響を考えると正直ぞっとする。