英国・スコットランド Glenrothes 補選

2008年11月6日

イングランド中央銀行が1.5%の利下げを断行し、政策金利は3%となった。政府はもちろん、英中銀内でもかなり危機感が募っていた模様だ。これはもちろん重大ニュースで、英国の景気悪化がかなり深刻だということを示唆しているため、この利下げは経済のみならずこれからの政局にも影響を与えるだろう。

しかし今日政治的に注目されているのは、スコットランドにある Glenrothes 選挙区の補欠選挙だ。なお、補欠となったのは連合王国議会の議席で、内政の多くの権限が委譲されたスコットランド議会とは異なる。

この Glenrothes はブラウン首相の Kirkcaldy & Cowdenbeath に隣接する選挙区で比較的安全な労働党の議席だったのだが、熾烈な選挙戦が繰り広げられている。この選挙戦は労働党対保守党ではなく、労働党対スコットランド国民党という構図だ。この Glenrothes の重要性は、労働党が連合王国議会で過半数を得る場合には勝たなければならない選挙区の一区であり、またスコットランド内での労働党と国民党どちらが評価されているかがわかるところにある。

労働党は現在連合王国議会で過半数を占め、政権与党だ。一方国民党はスコットランド議会で最大勢力で与党だが、議席数は半数には至らず少数政権だ。スコットランド政府の支持率は高く、国民党にとって追い風となっている。国民党は独立を党是として掲げているので、スコットランド政府として実績を積むことにより、独立に現実性を持たせようとしている。

ブラウン政権に対する風当たりが強かった7月には、牙城と言ってよい Glasgow East 補欠選挙で労働党が国民党に議席を奪われるという事態となり、あわやブラウン政権瓦解という報道があったこともある。しかし最近はブラウン首相が果断に経済問題に対応していることが英国民に評価されており、もしこの補選で労働党が勝てば党勢が回復基調にあるということになるが、もし国民党の勝利に終われば労働党の状況は依然厳しいものがあることとなる。

労働党が時期総選挙で勝つにはスコットランドの選挙区が重要になってくる。もし国民党が勢力を伸ばすとなると、労働党も保守党も連合王国議会において過半数に届かない可能性がある。

追加:2008年11月8日

労働党が予想に反して国民党に差をつけての勝利となった。ブラウン首相は政府の景気対策が評価されているとの見解を示した。

蛇足

SNP Scottish National Party をスコットランド「国民党」と訳すか「民族党」と訳すかで意見が分かれるところだ。スコットランドという「国」の独立を目指し、その国に住む人のための党であり、スコットランド民族(人種)を代表するというわけではないので、「国民党」の方がより適切だと思っている。