スコットランド独立を問う住民投票

今後3年以内に、スコットランドにて独立を問う住民投票が行われることが決まった。これは、昨年のスコットランド議会選挙で、独立を標榜するスコットランド国民党が大勝したためで、2015年までに行われることは明白だったが、いつ行われるのかは未定だった。しかし、ここ一週間で政治が動いた。まず、連合王国首相のキャメロン氏が、住民投票は今後18ヶ月以内に行われるべきと表明。一方、サモンド・スコットランド首相 (First Minister) は、キャメロン首相のこの発言に反発し、数日後に2014年秋を住民投票の時期と発表。有権者がスコットランドに住む人々になり、スコットランド以外の連合王国の国民は投票できないので、「国民投票」というよりも「住民投票」の方が合っているだろうか。ただしスコットランドという「国」が存在するという立場ならば、国民投票という表現でも間違いではない。英語では referendum なので、この問題は起きない。

「いつ」スコットランド住人に独立の是非を問うのか、揉めているが、更に、ただ単に独立の是非を問うのか、それとも、連合王国議会及び政府からスコットランド議会と政府に更なる自治権の移譲を、独立とほぼ現状維持の間の第3の選択肢として、スコットランド住人に提示するのか、意見に食い違いがある。現在の世論調査によれば、独立派は少数であり、独立か否かの二者択一であれば、おそらく否となるだろう。そのため、サモンド首相は、理想としては独立を目指すが、最大限の自治権を現実路線としている模様。最大限の自治は、税制を含むスコットランドの内政に関する権限を、完全にエディンバラに移譲することと理解してよいだろう。つまり国の中に国があるようなもの。一方、キャメロン首相は、独立か否かでの二者択一の住民投票で、独立が大きな差で否決されることを望んでいる。そうすれば、当分の間はスコットランド独立という可能性はなくなるだろうし、独立を党是とするスコットランド国民党の弱体化を誘うかもしれない。

つまり、現在争われているのは、誰が住民投票の時期と内容について、決めることができるかということ。法的にはスコットランド独立を問う住民投票について決める権利は、明確にロンドン・ウェストミンスターにある連合王国議会にあり、エディンバラ・ホリルードにあるスコットランド議会にはない。しかし、サモンド氏はスコットランド議会主導で、いつそしてどのような内容の住民投票が行われるかを決めるべきと主張している。これは、サモンド首相率いるスコットランド国民党が、独立の是非を問う住民投票を行うことを、公約としてスコットランド議会選挙に臨み、勝利を収めたから。スコットランド議会選挙では、多数政党制にて一政党による単独過半数を防ぐ小選挙区比例代表連用制が用いられているのに、スコットランド国民党はまさに地滑り的勝利で過半数を得た。また、連合王国総選挙は2010年に行われたが、スコットランド議会選挙は2011年と、直近の民意という法的ではなく政治的意味では、サモンド首相は独立に反対するスコットランド人の支持をも得ていると言われている。

スコットランドには、保守党議員より最近中国から来たパンダの数のほうが多い、などとよく言われている。前回2010年の連合王国議会選挙で、保守党がスコットランドにある59選挙区で得たのは Dumfriesshire, Clydesdale and Tweeddale という1区のみ。つまり、それだけ保守党が不人気であるかを示している。そして、連合王国政府を支える与党の保守党と自由民主党のスコットランド選挙区の議席数は、合計で13議席。ちなみに連合王国議会で野党の労働党も独立反対派であり、少なくとも連合王国の政党は圧倒的にスコットランド独立に反対する立場。労働党の立場に関係なく、キャメロン首相がスコットランドに関することを連合王国政府として決めることを、多くのスコットランド人は不快と感じるし、サモンド首相はこの不快感を巧みに利用するだろう。

これから紆余曲折あるだろうが、スコットランド独立を問う住民投票は行われるだろう。いくら低いとはいえ、スコットランド独立・連合王国の解体という可能性があること自体が大ニュース。