英国政治 | 「影の財務相」と紳士協定

2008年11月16日

英国が本当に紳士の国かは別問題として、成文憲法を持たない国なので、不文律の紳士協定が多い。特に政治において、できることとできないことが慣習 (convention) という形で数多くある。実際いつどのように形成されたか定かではない慣習だが、だれかが破るとすぐに知れ渡り問題になる。影の財務相ことオズボーン氏はどうやらある慣習を破ってしまったようだ。

昨日11月15日付の Times 紙のインタビューで、ブラウン首相の財政赤字を拡大する政策が英通貨ポンドの暴落を誘発するという意見を述べた。これが、見解としての正誤関係なく、政治家は通貨の「暴落」を「予測」しないという慣習に反する行為なのだ。

保守党内でも非難の声が聞こえ始め、下手をすると辞任に追い込まれる様相を呈してきた。これには理由がある。実はオズボーン氏、つい最近社交の場での紳士協定を破り、政治問題に飛び火させた前科がある。今年の夏、オズボーン氏はオックスフォード大学時代の友人のロスチャイルド氏から地中海で歓待を受け、当時欧州委員だったマンデルソン氏とロシア人の大富豪デリパスカ氏とヨットで会った。この場で、現在大臣となったマンデルソン氏がブラウン首相をこき下ろしていたことをオズボーン氏が暴露したのだ。「私」の場での発言は「公」にしないという紳士の不文律を破ったオズボーン氏にロスチャイルド氏は激怒し、オズボーン氏がデリパスカ氏から政治献金を要請したとタイムズ紙に投稿した。外国人の個人からの政治献金は違法なので、もし事実であったならば辞任沙汰だったのだが、どうも有耶無耶になった矢先に、オズボーン氏はまた紙面を賑わすこととなった。

一時党内でキャメロン党首を凌ぐ程のオズボーン氏の人気も凋落気味で、経済政策の主導権を握ろうとしたのが、また判断を誤ったようだ。一回目は寛大でも二回目の失敗は許さないという政治の世界で、オズボーン氏は苦境に陥った。