ポンド下落と hung parliament

2010年3月10日

英ポンドが他の通貨に対し下落している。これまで最大野党保守党が安定多数の議席数で政権奪取の勢いを見せていたが、最近の世論調査によれば、与党労働党との差が縮まってきている。もしこのままで総選挙となれば、保守党は下院最大会派になっても過半数には満たない結果となり、政治的に不安定な状態になると市場は危惧しているようだ。このように最大会派が過半数に届かず、連立か少数政権となる議会を hung parliament と呼ぶ。なお、選挙日はまだ公示されていないが、2010年5月6日が有力視されている。

英国は単純小選挙区制であって、連立あるいは少数政権に馴染みがないので、実際にどの党も過半数に届かない場合、選挙後新政権発足まで時間がかかるかもしれない。財政状態があまりよくないため、必要とされる増税と歳出削減が行われないと、さらに財政が悪化する。2大政党(労働党と保守党)両党そして自由民主党は、国による景気梃入れから財政再建に政策変換をしなければならないことを理解しているが、その時期について意見が分かれているし、増税と歳出削減の割合についても違いがある。2大政党で負けた方は、いわば反対する野党の立場を取るだろうから、連立か少数政権の場合、政局が混乱するだろう。市場の見方はどちらの党でもよいから安定多数を確保して欲しいというところ。

もし保守党も労働党も過半数を得なければ、第3党の自由民主党が鍵を握る。おそらく保守党あるいは労働党+自由民主党で過半数となるので、閣外協力あるいは正式に連立で閣内協力という形になるか注目されている。もし連立政権となれば、議席数だけではなく、単純小選挙区制という死票の多い制度でも連立与党の得票率が50%近くあるいはそれ以上となり、民意を反映しているため、安定した内閣を組閣すれば、痛みの伴う改革を押し進めることができるかもしれない。

どのような結果となっても長期間の無政府状態だけは避けなければならないが、実際どうなるか選挙結果が出るまでわからない。