北海道の春

北海道は広いので、春の訪れも模様も様々だろう。正確には「札幌市にほど近い道道44号沿いの石狩市の春」だが、記事のタイトルにするには長たらしい。

一応、この石狩出身だが、年間を通して北海道に住んだことはない。子供の頃、東京に住んでいて、両親の実家のある石狩と札幌は「爺ちゃん婆ちゃんのいる夏冬に帰省する」場所だった。そのため、春を北海道で過ごした記憶はなく、最近の一時帰国が初めてだった。ただ、あまり記憶の良いほうではないので、のちに家族に訂正されるかもしれない。

梅と桜が同時に咲く場所として北海道は知られているが、それだけではなかった。庭や公園には桜と梅の他に、クロッカス・水仙・チューリップ・サラサモクレン・レンギョウ・ツツジが同時に咲いていた。あまり植物に詳しいわけでもないし、花を愛でることのできる優雅な人間でもないが、例年英国・ロンドンの春を様々な花の開花と花粉症をもって実感しているので、まさに百花繚乱の北海道の春には驚いた。

ロンドンの冬は肌寒く暗い。でも雪はあまり降らないし、積もることもほとんどない。日が長くなり、気温が上昇すると、地中から芽が出てきて、まずクロッカスが咲き、水仙が続く、というように春は徐々に訪れるもの。天候によっては、違う花の開花が重なることもあるが、大抵は順序がある。しかし、雪に覆われている冬が長いせいか、北海道では一遍に咲く。

段階的に訪れる春、一度に来る春。今年は両方を楽しむことができたし、今後も機会あればこの時期の北海道に行きたいと思う。でも、違う趣の春を解するには、もっと風流な心を持たなければ⋯⋯。

ちなみに実家の庭にあった桜花は、梅より先に咲き、満開となり、散ってしまった。同時ではなく、順序が逆になっていた。