西洋梨

昔というか子供の頃あまり好きでもなかったのに、大人になると食べられるようになったり、美味く感じるようになる食べ物は結構多い。味覚が発達しているのか、それとも退化しているのか、どちらだろうか。私にとって西洋梨もそんな食べ物。

シャキシャキとした食感で瑞々しく甘い和梨は幼い頃からずっと好きだが、西洋梨は苦手だった。味よりも中途半端な食感がどうも嫌いだったと記憶している。シャキシャキはしていないが、バナナのような柔らかさでもなく、なんとなくぬるっとしたところがどうも⋯⋯。ちなみに和梨は英国のスーパーで nashi pear として売られていて、和英で「梨」が二重になっている。

今は和梨も西洋梨も美味い。昨日スーパーに行ったら西洋梨4個入りのパックが見切りで半額近くになっていた。秋に収穫される果物だから英国産ではなくアルゼンチン産。これまた遠いところから来たものだと妙に感心した。通年で果物が世界中から輸入販売されているので、英国のスーパーでは季節というか旬を感じることは少ない。

話は飛ぶが、ドイツ語で「梨」は Birne で「電球」は Glühbirne である。最初の部分の glühen は白熱する・赤熱する・燃えるというような意味で、英語の glow に当たる。日本語に直訳すれば「白熱梨」で、英語に直訳すれば glowing pear とでもなるだろうか。白熱電球を思い浮かべば納得。英語で「電球」は「光る球根」こと light bulb で、梨ではなくて球根なのが面白い。今は蛍光灯とLED照明が主流となり、実に様々な形をした電球が売られている。もう梨でも球根でもなく球でもないのが多い。そのうち Glühbirnelight bulb も電球も消えていく単語だろうか。

梨を食べるのは良いが、どうも最近、中年男なのに体型までもが西洋梨になってきているような気が⋯⋯。