玉ねぎの酢漬け

クリスマスの後はセールの季節。でも英国ではセールが年中乱発される傾向にあり、今年はクリスマス前にすでにかなりの値引きがあった。迫る英国の欧州連合離脱の不安からか、消費者心理が悪化しているのかもしれない。

ウインドー・ショッピングを楽しむ柄でもないし、欲しいものがたくさんあるわけではないので、せいぜいスーパーでクリスマス用の食料品が安くなっているのを買う程度。数年前に半額になった生ハムの原木まるまる一本購入したことがあるが、いくら美味くて食べ方を変えても毎日毎日食べていたら飽きたもの。

クリスマス・プディングなどまさにクリスマスらしいものが値引きされているのは分かるが、大手スーパーの Marks and Spencer で玉ねぎの酢漬けも£2.50から£1.25に半額となっていた。はて、玉ねぎの酢漬けはクリスマスに食べるものなのだろうか。どうも関連性を見いだせないが、パッケージには、セイヨウヒイラギが描かれていてクリスマスを連想させる。もし英国で最もクリスマスらしい絵の構図があるとすれば、セイヨウヒイラギ・雪・ヨーロッパコマドリで構成されるだろうか。

セイヨウヒイラギは真冬に真っ赤な実がなる。英語で holly と呼ばれていて、英国でクリスマス近くになると歌われるクリスマス・キャロル The Holly and the Ivy に登場する。もう一方の ivy はセイヨウキヅタのこと。このクリスマス・キャロルの歌詞にも出てくるのだが、セイヨウヒイラギの刺々しい葉と鮮やかな赤の実は、キリストの受難の荊冠と血に関連付けられている。キリスト教が伝達する以前もセイヨウヒイラギは単なる植物以上の何らかの意味や象徴や存在を有していたらしいから、何もかもが灰色に見えてしまう英国の冬に際立つ濃い緑と赤は、力強い生命力の表れなのかもしれない。

玉ねぎの酢漬けは安くなっていなくても買うもの。サラダに加えて良し、チーズと合わせても良し、酒のつまみにも良し。酢は体にも良いらしい。少なくとも不健康ではないだろう。この Marks and Spencer の玉ねぎは大振りで、酸っぱすぎず甘すぎず、玉ねぎ本来の風味を残しつつ、麦芽を原料とするモルト・ビネガーが味に深みを出している⋯⋯偉そうな事を書いたが、つまり美味い。日持ちするのだから、もっと買っておけばよかったと後悔中。