電子書籍

今年になってようやく本格的に電子書籍を読むようになった。昨年まで「本は紙に印刷されたもの」という先入観があって、電子書籍は数冊セールで安くなっていたのを買った程度で、ほとんど読んでいなかった。コンピューターやスマートフォンで「本」を読むことに抵抗があった。そして本屋や図書館で本棚に並ぶ本を眺めるのが楽しみの一つだった。書店に行けば、どんな新刊が話題の書なのかさっと平積みの本を見れば分かったし、本棚を眺めれば興味が湧く同じジャンルの本を偶然発見することもあった。しかし新型コロナウイルス感染症の伝播によって、去年と今年は本屋に行くこともままならず、図書館も休館していた期間が長かった。ついに読みたい紙の本がなくなり、現在読んでいるのは全て電子書籍という状況に。そして半年前はまだまだ断然紙の本派だったのが、今や電子書籍の方が良いかもしれないとまで思いはじめている。頑固で新しいものを頭ごなしに否定して長い間使うことに抵抗するという悪い癖が出ていた。

電子書籍用の専用端末は持っていないので、スマートフォンのアプリケーションを用いている。販売されている本は Google ブックスか Amazon Kindle で買っていて、図書館の蔵書は OverDrive で借りている。スマートフォンの画面は小さすぎると思っていたのだが、慣れてくると案外ちょうどよい大きさだと気づいた。日本の文庫本やドイツの Reclam 文庫より一回り小さい程度。EPUB形式の電子書籍であれば、文字の大きさ、字体、行間などを細かく調整できるので、自分の好みに合わせられる。これが印刷物との違いで最大の利点だと思っている。1ページあたりの文字数は少ないので、結構速く読めるし集中できる。

もし全ての電子書籍がEPUB形式であれば、スマートフォンだけで良い。しかし出版物の一部はEPUB形式ではなくPDF形式。特に Open Access の学術書や公共機関の資料に見受けられる。さすがに文字が小さくなるスマートフォンでは読めない。電子書籍用の専門端末に必要性を感じないし、主にPDF形式の出版物を読むためにタブレット端末を買うのも躊躇する。コンピューターで読めないことはないが、できれば縦向きのディスプレイが欲しい。現在使っている2画面は横向きで固定されている。しかしディスプレイが3台になっても使いこなせるか疑問だし、そもそも置き場があるだろうか⋯⋯。