プロ・ブロガーについて

プロ・ブロガーなる「職業」があるようだが、まだこれといった定義はないらしいので、一体何者なのか、少し考えてみたい。

後に広告の話をするため、この場で、当サイトではコンテンツ連動型・行動ターゲティング広告のアドセンスを利用していることを明らかにしたい。しかしサイト運営で生計を立てる「プロ」ではないし、また認定団体もないし、自称するつもりもない。またブログあるいはCMSでこのサイトを構築しているわけでもないので、私は「ブロガー」ではない。どのような定義でも、私は「プロ・ブロガー」ではない。このようなことに興味がある人間の戯言と考えて頂きたい。

まず「プロ・ブロガー」の定義として

「ブログという媒体で、生計を立てることができるほどの収入を得ている人」

では曖昧すぎるだろう。有名人や芸能人がブログを書いて、高額の広告収入を得ていたとしても、それは有名人であること芸能人であることから派生した収入源であり、「プロ・ブロガー」と呼べるかどうか疑わしい。

そのためブログが中心であるはず。でも例えば

「ブログという媒体中心で生計を立てる人」

では、いかがわしい動画を投稿したり、個人情報を収集したり、詐欺行為を行ったり、ねずみ講を紹介したり、第三者の著作権を侵害したりして、つまりは社会倫理的あるいは法的に問題のある方法で、収入を得ている人も含まれる。「プロ・ブロガー」はそのような人々とは混同されることは望まないだろうし、まだまだ幅が広すぎ、定義として成立しないだろう。

それでは

「ブログという媒体を中心に、文章などを創作して、また場合によっては書籍や講演などの派生的事業で、生計を立てる人」

でどうだろうか。創作物は一次的の場合もあれば、合法な二次的の場合もあり、読者を引き込む「何か」があり、かつ生計を立てることができるほどの収益を上げている、とでも言えるだろうか。

興味があるところは「どうやって」生計を立てていること。つまり収入源のこと。どうすれば、ブログ中心で収入を上げることができるか、幾つかの方法が考えられる。もちろん、他にもあるだろうが、主な方法を列挙すると、下記のようになる。

1)ブログの有料化。払わなければ、ブログを読ませない。

2)読者から寄付を募る。ブログを読むのは無料だが、ブロガーの努力に対しての寄付を呼びかける。

3)コンテンツの商品化。ブログに掲載された自作の創作物利用の対価として、支払いを求める。

4)ブロガーの商品化。言葉は悪いが、ブロガーが自身を「プロ・ブロガー」としてブランド化というか商品化すること。上記3の「コンテンツの商品化」と重なる部分があるが、例えば本を出版したり、講演などを行うこと。つまり派生的事業。

5)広告。

払ってでも読みたいと思うブログはそう多くないだろうし、寄付も結構ハードルが高そうだし、コンテンツの商品化も難しそうで、個人のブランド化というのも生半可ではなさそう。おそらく一番高収入となるのは、4で個人のブランドを確立した人々であろうか。「プロ・ブロガー」であることについて本を出版し、講演を行ったりすることができて、収入源の多様化が可能となる。

統計があるわけではないが、パッと見た印象では5の広告が多い。そして広告は更に細分化できる。

どのように分類するか、いろいろと方法があるだろうが、個人的には、直接的利害関係の有無で分けることができるかと思う。ブログに広告を掲載して収入を期待するかぎり、金銭的利害関係が発生するが、それでも直接と間接の利害関係の差別化ができるのではないだろうか。違う表現であれば、言論あるいはメディアという編集・論評と広告の明確な分離があるかないか、そしてもし混同あるいは相反する場合は明確な説明があるかないか。

直接的利害関係はわかりやすくいえば、アフィリエイターの場合。アフィリエイターとは、自己商品やサービスを販売するのではなく、第三者の商品やサービスを選んで自分のブログで紹介し、ブログ上のアフィリエイト・リンクを経て広告を出稿したサイトで売上があった場合に、その売上高の一部を報酬として受け取る人。アフィリエイターの直接的利害関係の特徴は(1)紹介する物品やサービスを選べること、そして(2)報酬は広告主サイトの成果と比例すること。自分で選んで紹介したものが売れれば売れるほど儲かるという話。

一方、間接的利害関係は、このサイトで利用しているアドセンスのようなコンテンツ連動型・行動ターゲティング型広告のこと。サイト主は、広告が表示またはクリックされることによって、報酬を受け取る。でも、アフィリエイトとの違いは、事前にどの広告が表示されるか知ったり選んだりすることはできないこと。そして、表示されたあるいはクリックされた場合の単価は、多くの要因で決まる落札方式のため、サイト主・広告掲載者にはわからない。サイト主としては、広告収入を増やすために、全体的にサイトの内容を合わせることもあるだろうが、特定の広告主にサイトの内容を合わせることはできない。

良い例えかどうかわからないが、書評を書いたとしよう。書評執筆に対して報酬を第三者から受け取り、その書評は他者が編集する第三者サイトに掲載された場合、もしそのサイトに書評の対象となった本のアフィリエイト広告があって、広告経由での本の売上の一定率を報酬としてそのサイトが受け取っていたとしても、評者と広告の間に利害関係は発生しない。言い方を換えると、別に本を酷評して、結果として読者の購買意欲が落ちて、アフィリエイト広告経由での売上が低くなっても、評者には関係ない。もちろん書評を掲載したサイトにとっては問題だが。

次には間接的利害関係がある場合。これは書評を広告もある自己サイトに掲載すること。コンテンツ連動型中心であれば、その本の広告が出るかもしれないし、似た書籍やオンライン書店の広告が表示されるかもしれないし、それを期待することもあるかもしれないが、サイト主は閲覧者の目に留まる広告がどの広告であり、表示あたりクリックあたりどれだけの価値があるかわからない。もし、本の宣伝が表示されることを期待するのであれば、購買意欲が落ちるような酷評は控ようと、意識するかもしれないという微妙な点があるが、それでも下記の直接的利害関係とは性質が違う。

直接的利害関係は、書評を自己サイトに掲載し、オンライン書店のアフィリエイト・リンクを選んで貼ること。前述のとおり、売上の一定が報酬となるため、売れれば売れるほど、収入が上がる。辛口批評でも購買意欲を高めることができる評者もいるだろうが、本を賞賛する書評の場合、実際にその本が賞賛に値すると評者が思っていたのか、閲覧者の購買意欲を高めるためだったのか、つまり言論人としての書評なのか、それとも収益を優先するアフィリエイターとしての書評なのか、あるいは両方だったのか、第三者にはわからないだろう。変なことだが、評者としてアフィリエイトについて意識しまいと意識してしまう時点でもうかなり意識してしまっているのだ。

直接的利害関係の存在は、かなり大袈裟だが、利害関係の衝突を生む可能性がある。清廉潔白、公平無私の人間もいるだろう。その人を知ることができれば、どのような人間かもそのうちに把握できるだろう。傍目には相反する直接的利害関係があっても、その利害関係に左右されず、評価される人間もいるだろう。しかし「プロ・ブロガー」が、アフィリエイターとは違い、個人「メディア」であり言論人・創作者であるという前提ならば、このような利害関係について明示し、更に説明する必要があるのではないか、と個人的に思う。それはメディアにとって、読者に誠実であるという重要な信用度に直結するからであり、説明がなければ、アフィリエイターかプロ・ブロガーか、閲覧者には分かりづらい。

「プロ・ブロガー」の場合は、純正アフィリエイターではなく、一人二役、言論人あるいは創作者としての立場、そして収益を得る事業主としての立場があるため、板挟みというか、非常に難しい局面も多いはず。直接的利害関係および利益相反が存在する、あるいは存在すると第三者に見えるような状況が数多くあるだろう。乱暴な言い方かもしれないが、難しいからこそ、そしてブログ上の広告が大きな収入源であるから、明らかにする必要がある。そうでなければ、なぜ「アフィリエイター」と呼ばず「プロ・ブロガー」と呼ぶのか、個人的には理解できない。両立が難しい両方の役に誇りを持つべきだとも言えるだろうか。

これからもウェブとメディアを取り巻く環境は変化しつづけるだろうし、その中で個人が情報あるいは創作物を発信して生計を立てることができる世界は望ましいと思う。成功あるいは失敗は個人の信用に裏打ちされるし、個人メディアとして生計を立てることができるウェブの経済制度が確立されるのか、そして「プロ・ブロガー」が一般的な職業となるか、それとも一過性で極小数の例外的存在となるのか、今後数年は興味深い時期となりそうだ。