マイル・ポイント建てアフィリエイト収益の不思議

インターネット上に様々な広告がある。リンクをサイトに掲載して商品やサービスを紹介するアフィリエイトも多く存在し、内容によっては成約した場合の紹介料をマイルやポイントとして受け取ることができる。例えば航空会社やホテル・チェーンと連携したクレジット・カードの紹介で、航空会社のマイルだったりホテル・チェーンのポイントだったり。商品・サービス紹介の成約の対価として得たアフィリエイト利益は、法定通貨だろうと金の延べ棒だろうと暗号資産だろうとマイルだろうとポイントだろうと、課税対象の所得に当たるはず。サイトを長く運営してきて、マイル・ポイント建てでアフィリエイト報酬を得たことがなく、微々たる法定通貨の Google AdSense の利益発生しか経験がない人間からすると、マイル・ポイントで受け取ると後々の会計や税務処理が面倒に見えるし、非常に不思議。

税理士でもなく、税制に詳しいわけでもなく、単にインターネットで調べたかぎり⋯⋯という自信もなければ信用もできない話になるが、日本の場合、個人事業主のアフィリエイターやブロガーやインフルエンサーや YouTuber のアフィリエイト収益は、サイトや動画などインターネットで行われる営利目的の継続的行為で、商品紹介という形で事業に関連している、あるいは役務提供の対価の性質を帯びているため、事業所得または雑所得に区分されると理解している。ただマイル・ポイントに有効期限があったり、付与後も発行者に解除権があるため、受贈者にとってマイル・ポイントは停止条件付き贈与契約に基づく債権にあたり、取得時・保有中は課税されず、所得として課税対象になるのは経済的利益が発生する停止条件の成就たる使用時だという。受贈者にとって債権という資産であれば、発行者にしてみれば負債になる。航空会社(JAL・ANA)の有価証券報告書で有効マイルは流動負債の契約負債になっていて、使用や交換や失効で収益を認識している。

マイル・ポイントによっては、他のポイント・プログラムと一定のレートで交換できたり、固定レートで実質的に現金化できて、疑似通貨の一面がある一方、基本的に法定通貨との交換レートは、発行者の航空会社やホテル・チェーンの恣意によって決まる。1マイル・ポイントの価値は、人や条件や状況によって変わるし異なる。優良顧客や閑散期だったら、他の顧客や繁忙期より好レートでマイル・ポイントを航空券や宿泊権利と交換できる。マイル・ポイントを使うまで課税時期を先送りにしたり、航空券や宿泊費が旅費交通費など事業に必要な経費として認められるのであれば、現金を直接使わずに経費計上ができて節税にもなりうるので、メリットがありそうだが、法定通貨換算価値が人と時と場合によって違うため、マイル・ポイントを使って得た経済的利益を飛行機に乗るたびホテルに泊まるたびに記録しないといけないはず。明細に通常支払うべき法定通貨額が載っていれば、マイル・ポイントで支払った分の記録は楽だろうが、記載されていない場合は調べて計算しなければならず甚だ面倒くさそう。日本円でなければ、為替レートで換算しなければならない。また一般的にマイル・ポイント口座は個人名義、つまり受贈者は個人。アフィリエイト収益が大きく法人成りして、個人と法人の間でマイル・ポイントのやり取りがある場合は、帳簿付けと税務処理が更に煩雑になりそうだ。

一消費者としていわゆる「ポイ活」に勤しんで貯めたり、懸賞で当たったりしたマイル・ポイントを使って、一年の間に無料で飛行機に1回乗ったりホテルに1泊するくらいであれば、雑所得あるいは一時所得の控除額内に収まり、税務署が実際に問題視することはないかもしれないが、何十件何百件も商品を紹介して得た控除額を遥かに超える金額に相当するマイル・ポイントを使用していれば、きちんと納税しているのか目を付けられそうなもの。無論マイル・ポイント建てのアフィリエイト収益が大きいアフィリエイターやブロガーやインフルエンサーや YouTuber は、このような事に詳しい税理士に任せているのだろうが。