英国は賭博が盛んな国で、街を歩けばブックメーカー (bookmaker) という賭け屋の店舗が並び、ネットで検索すれば合法なオンライン・カジノでたくさん出てくる。オンライン賭博の事業者はサッカー・チームのスポンサーにも名を連ねている。賭博対象は競馬やスポーツの結果だけではなく、選挙の結果だったり、今年のクリスマスは雪が降ってホワイト・クリスマスになるかなど、森羅万象。何年も遠ざかっていたが数年前にふとしたことで買って以来、1等の当籤額が大きくなったときにたまに宝くじを買うことはあるが、賭け事はしない。
現在日本で芸能人やスポーツ選手がオンライン・カジノで賭博をしていたことが発覚して問題になっている。競馬・競輪・競艇・オートレースの公営競技とスポーツ振興投票以外の賭博は違法で、日本国内から海外のサイトにアクセスして賭博をするのは違法。入金や出金など決済に関与すると賭博幇助に問われるので、金融機関にとって頭が痛い問題ではないだろうか。日本の銀行口座やクレジット・カードや電子マネーを使って海外のオンライン・カジノと決済するのは簡単ではないらしい。オンライン銀行も増えてきたが、非居住者が銀行口座を開設するのは多くの国で難しい。オンライン・カジノが合法な国でもそうだ。資金洗浄やテロ資金提供の危険があるので、本人確認手続きいわゆるKYC (know your customer) が年々厳しくなっている。
そこで決済代行業者が存在する。2024年7月の警察政策学会資料第 135 号『オンラインカジノをめぐる法的諸問題』によると
オンラインカジノ参加者は、決済代行業者の日本国内の銀行口座に賭金を入金する。決済代行業者は、入金された金額をオンラインカジノ事業者(アカウント)に入金し、オンラインカジノで使用するポイントを得て、オンラインカジノ参加者に伝達する。オンラインカジノ参加者はそのポイントで賭博を行い、賞金(ポイント)があれば決済代行業者に伝達する。決済代行業者はそのポイントに基づいてオンラインカジノ事業者から賞金の払戻しを受け、決済代行業者の日本国内の銀行口座から参加者に出金する。
オンライン・カジノが合法な国でも、出入金の銀行口座はその国になければならないことが多い。そのため
決済代行業者が、日本国内の銀行口座とは別に、オンラインカジノ開設国にその居住者(共犯者)名義の銀行口座を有し、当該口座を使ってオンラインカジノ参加者のために決済代行業者の指図でオンラインカジノ事業者に入金し、また賞金を受領すれば、オンラインカジノ事業者との入出金は当該国の銀行口座に限定している国でも、容易に決済できる。
決済代行業者がオンライン・カジノや利用者からどのような報酬や手数料を受け取って利益を上げているのか、よく分からないのだが
決済代行業者は、決済代行に加え、日本国外のオンラインカジノの広告の表示やオンラインカジノのリンクを表示貼付する等、日本国内からのオンラインカジノ参加を拡大させる上で中心的な役割を果たしている
らしいので、オンライン・カジノからアフィリエイトのような報酬があるのだろうか。そして孫請けではないが、インフルエンサーにもアフィリエイトや案件という形で決済代行業者に集客して、教唆の一端を担わせているのだろうか。
賭博をするからには、どこかで法定通貨だろうが換金性の高いポイントだろうが暗号資産だろうが金銭の動きがある。素人目には決済代行業者摘発に重点を置けば良いように見える。そして必ずどこかで記録が残るので、警察が本気になれば、ほとんどの場合捕まるように思うのだが、どうだろう。日本には競馬など合法な賭博もあれば、私の目には三店方式という屁理屈で形式上合法になっているとしか映らないパチンコもあるのに、なぜわざわざ違法賭博をしたい人がいるのか、よく分からない。オンラインでゲームに似た感覚で簡単に入り込んでしまうのだろうか、それとも違法性自体にスリルを求めているのだろうか。
これからもオンライン・カジノ利用者がニュースになるだろう。社会問題として認識されて、厳しい目が注がれることになる。これまでオンライン・カジノや決済代行業者へのアフィリエイト・リンクを貼っていた、SNSインフルエンサーやブロガーや YouTuber やサイト運営者は、今頃青ざめていることだろうか。