翻訳のメーリング・リストに登録していると、目を疑うような条件の求人広告が送られてくる。最近「ご冗談を⋯⋯」と思ったのは、このメール。もちろん提示された翻訳料の低さに驚いが、それ以外にも「ちょっとおかしいなあ」と思う箇所があった。
まず、返信用アドレスが hotmail.com になっていること。これは hotmail.com がいけないというわけではない。私は通常 gmail.com のメール・アドレスを使っているが、それは個人だから。メール本文には会社のメール・アドレスが記されているので、この場合は会社のアドレスに統一されるべき。メールの冒頭に HELLO!! と大文字で認められて、感嘆符が二重になっている。親しい人ならば別だが、馴れ馴れしすぎるというか、ビジネス・メールとしては相応しくない。送信の前の確認を怠ったのか hire hiring となっている。その後のコロンとセミコロンの使い方も大雑把。
この案件は独文和訳で、翻訳料は原語一単語につき3セントと格安になっているが、他の重要な情報が欠落している。ここにある a small translation project は何を意味するのだろうか。少なくとも何万字にも及ぶ翻訳でないことは明らかだが、どれだけ短ければ small となるか、よくわからない。また何故か大文字で書かれている General Field も要領を得ない。法律や医療関係など、高度な専門知識は必要とされていないということだろうが、翻訳者にも得手不得手があるので、もう少し明らかにすべきだろう。納期・使用するソフトウェアの有無・翻訳料の振込時期と方法についての言及はなし。ちなみに、小数点が終止符 (0.03 USD) ではなく、コンマ (0,03 USD) であるのも、やはり気になる。
独文和訳なので、なぜ英語のメールを送ったのか、そんな疑問を持ってもよいだろうか。独文和訳に携わる翻訳者であれば、多くが英語を解するだろうが、それでもなんとなくおかしい。別に納品される完成された文章という位置づけではないから、メールが完璧である必要性はない。でも、第一印象は大切。そして、案件内容と条件があまりにも不明確なので、原語一単語あたり3セントで翻訳したいか否かという選択。次回、この会社からのメールを受信したら、いくら条件が良くても、警戒するだろう。それにしても、このメールを読んで、引き受けた翻訳者がいたのだろうか。