ここ最近は暑い日が多くて、長い散歩にも行っていないが、ウィンブルドン・コモンの近くに住んでいるので、時折ふらりふらりのろのろ木立の中を歩き、ベンチに座って風で鳴る葉と囀る小鳥を聴く。心が落ち着く。森林浴と呼べるだろうか。
木に囲まれて落ち着いたり思考に耽る行為に「森林浴」という言葉を与えたのは日本語かもしれないが、多くの人々が昔から行ってきたこと。フィンランド人の友人が、森の中の湖畔のサウナ付きの木小屋で一人悠々時間を過ごすのが至福、とよく言っていたのを思い出す。
最近 Le Monde 紙に森林浴と森林セラピーについて記事が載っていて、ストレスを軽減し免疫力を高めると書いてあった。「森林浴」は bain de forêt と直訳されていた。一方「森林セラピー」は sylvothérapie で、最初の sylvo- は「森林」を意味している。フランス語の sylvestre は「森林の」という意味の形容詞で、手元にある仏仏辞典には他に「育林・営林・森林管理」を意味する sylviculture が載っていた。もうちょっと大きめの仏英辞典には上記以外に「林業の・森林管理の」を意味する形容詞 sylvicole と「林業従事者」の sylviculteur の項目があった。それぞれの英訳は sylvicole が forestry で sylviculteur が forester だった。英語でも文語というか詩的な形容詞 sylvan と専門的な名詞 silviculture が英英辞典に載っているが、一般的には使われない単語。フランス語の sylvestre の語源はラテン語の同義の形容詞 silvestris で名詞は silva。古代ローマにおいての森の守護神あるいは精霊は Silvanus という名前だった。ドールハウスや人形のシルバニアファミリーのシルバニアもこれを語源としている。
英語で一般的に「森林浴」は forest bathing で「森林セラピー」は forest therapy だが、より難解な響きの sylvotherapy が使われることがあるだろうか。今朝起きたら晴れていても気温が低くなって過ごしやすい。風はやや強いが、久しぶりにウィンブルドン・コモンにでも行こうか。