言語を習う時にいろいろと覚えないといけないことがある。名詞の性もその一つ。英語には存在しないが、他のヨーロッパの言語では性が2つあるいは3つある。フランス語には男性名詞と女性名詞が存在する。語尾で決まったりすることもあるが、例外が存在し恣意的なので基本的には記憶しないといけない。新しい名詞の場合は男性名詞なのか女性名詞なのか、決まらなければならい。新型コロナウイルス感染症の covid も新語。
陳腐な表現だが、言葉は生きているもので常に変化する。私は言葉の正しいまたは間違った使い方ということはあまり気にしない。重要なのは話し手書き手の伝えたいことが意図したとおりに聞き手読み手に伝わるか否か。文法的に正しくても伝わなければ意味がない。文法的に間違っていても、伝えたいことが伝われば言葉としての役割を果たしている。乱暴な言い方かもしれないが、母語とする多数の人が使用しているのが伝わる言葉。たとえ最初は誤用だったとしても。誰かが決めるのではなく決まっていく。
日本や英国には正しい日本語や英語を定める公的機関は存在しないが、フランスにはアカデミー・フランセーズという国立学術団体がある。またカナダにはケベック州フランス語局が。これら公的機関のフランス語に関する勧告に影響力があり、少なくとも政府刊行物などは勧告の内容に従うだろう。
アカデミー・フランセーズのサイトに2020年5月7日付けで掲載された記事 (www.
ちなみに Google トレンドで le covid と la covid のどちらが検索されているか見てみると、フランスでは依然として男性名詞の le covid が主流。上記アカデミー・フランセーズの見解から la covid も検索されているようだが断然少数派。
興味深いのは、フランス以上にフランス語について敏感なカナダ・ケベック州。もともと le covid と la covid 両方が検索されていた。最初は le covid の方が多かったが、4月には逆転して la covid が僅差だが多数派になった。
アカデミー・フランセーズが一番気に入らないのは、英語の略語がフランス語として使われていることにあるのではないか、と勘繰ってしまう。