Augsburger Allgemeine (Ausgabe Stadt)
2021年3月16日 第12面
Die Sprache-Blüten der Pandemie
Anna Katharina Schmid
新型コロナウイルス感染症で生活が変わり、数多くの造語や新しい表現が生まれ、専門用語が知られるようになった。コロナ禍、三密、自粛警察、巣ごもり、濃厚接触、社会的距離、飛沫防止⋯⋯昨年まで見たことも聞いたこともない言葉が、日常会話やメディアで毎日のように使われるようになった。どの言語でも造語ができているだろう。ドイツ語も例外ではなく、上記新聞記事がなかなか興味深かった。ライプニッツ協会ドイツ語研究所 (Leibniz-
ドイツ語は複合語が作りやすい言語。例えば Anderthalbmetergesellschaft は1.5 (anderthalb) メートル (Meter) 社会 (Gesellschaft) で、他人と1.5メートルの社会的距離を保つよう推奨されたことに基づく。ロックダウン中に外出を控えての「コロナ太り」は Lockdownspeck, Coronaspeck という。この2単語に共通する Speck は「ベーコン」や豚肉などの「脂身」を意味するが、口語で人間の「皮下脂肪」を意味する。つまり「ロックダウン脂肪・コロナ脂肪」ということ。中には語呂が良いのも。飛沫 (Spuck) 防止 (Schutz) 板 (Scheibe) をあわせた Spuckschutzscheibe が飛沫防止用のアクリル板や仕切りを指す。
複合語以外にも混成語も多くあり、マスク (Maske) をしていてできるニキビ (Akne) が Maskne だ。面白い単語も多いが、コロナ (Covid) と馬鹿者 (Idiot) を組み合わせた Covidiot という他人を批難する言葉も生まれた。 英語でも無責任な行動をする人たちのことを covidiot と呼ぶ。
英国では昨年の春にトイレットペーパーの買い溜め買い占めがあった。ドイツでもあったのだろう。そんなことをドイツ語では Klopapier-Hamstern と表現する。トイレットペーパー (Klopapier) も買い溜め (Hamstern) も新しい言葉ではないが、社会現象として強い印象を多くの人に与えて2単語が繋ぎ合わせられたのだろう。「買い溜めする」という動詞 hamstern と「買い溜め」という名詞 Hamsterkauf はペットとして身近な「ハムスター」が由来。ハムスターが頬袋いっぱいに餌を詰め込むこと、また巣に食料を備蓄する姿から。
軍事的比喩も用いられている。例として「ウイルス前線」の Virenfront が挙げられる。他には「大きな波」という意味で Tsunami が Corona-Tsunami という形で使われている。変種株を Mutation ではなく Mutante を呼ぶが、それだとまるでアニメに出てきそうな巨大怪物だとドイツ語研究所の研究員はコメントしている。
言葉とは生きているもの。新語は言葉の生命力の表れかもしれない。でも10年後20年後、この時期に生まれた言葉の多くは疾うに忘れられているだろうか。