客をあなた呼ばわりする迷惑メール

たまに誤認もあるが、ここ数年 Gmail の迷惑メール判別精度はかなり高くなっている。数日分の迷惑メールが溜まっていたので、さっと確認して全て削除しようと覗いてみると、こんな件名のメールが1通。

重要 Rakuten お客様 残念ながら、あなたのアカウント更新は失敗しています。支払い異常を検知したらご確認下さい。

いろいろと突っ込みどころがあり、日本語を母語とする人が書いた文章とは到底思えない。自動翻訳ではなかろうか。恐らく偽サイトに誘導して、ユーザー名とパスワードを入力させてアカウントを乗っ取ろうとするフィッシングのメール。

日本語を外国語として学ぶ人たちに話を聞くと、日本語にはいろいろと変だったり難しかったり面倒なところがある。その中に一人称・二人称の使い分けが挙げられる。英語なら一人称は単数 I と複数 we で、二人称は単複関係なく you と簡単。親称と敬称があってもそう増えるわけではない。ドイツ語であれば一人称は単数 ich と複数 wir で、二人称親称単数 du と複数 ihr に加えて敬称単数複数両方の Sie が存在する。日本語だと一人称は私(わたし・わたくし)の他に僕・俺・わし・あたし・わいなど、二人称ならあなたの他にそちら・君・お前・あんた・貴様など、TPOをわきまえて使い分けないと誤用あるいは失礼にあたる言葉が多い。自動翻訳で大体一人称は「私」で二人称は「あなた」と訳されているし、日本語教室でもそう教えているのだろうか。

メールの件名に話を戻すと、大企業が「お客様」を「あなた」呼ばわりすることはまずありえない。通常「あなた」は対等の立場あるいは目下の人に対して使われる。目上の人には名前や客・患者などの立場に様を付けたり、社長・課長などの役職だったり先輩・先生・師匠などの敬称を用いる。このようなメールであれば「お客様」で統一されているはず。この文章に騙される人はいるのだろうか。