英語は単語数が多いことで知られている。多くの人が第一外国語として学び、必要性があるかもしれないが、他言語からの借用に比較的寛容。トンデモ説だろうが、簡単に違う言語から取り入れることができるのは、性と格を気にすることなく、動詞が複雑でなく、名詞の複数形は基本的に語尾に s を付け加えることで済むからではないのかと思っている。
2021年10月1日に発行された南アフリカの Mail & Guardian という週刊紙の第2面に、ケープタウンでダチョウが公道に出たという小さな事件が取り上げられていた。柵が盗まれたために外に出られたという。この記事の一文に
The lekker thing about Cape Town is its mix of city and farm life.
とあった。ケープタウンの愉快あるいは魅力的なところは都市と農業の融合だ、とでも訳せるだろうか。オランダ語は読むのであれば大まかなことは理解できる。そのため南アフリカ英語の lekker がオランダ語の lekker と同義であることはすぐに分かった。オランダ語では「楽しい、愉快な、美味い、良い、心地よい」と幅広い意味があり、手元の蘭英辞典で調べると英訳は nice, good, tasty, delicious, well, fine, pleasant, comfortable, lovely だ。ちなみに似ているドイツ語の lecker の意味は狭く、一般的に食べ物が「美味しい」ことを指す。転じて食べたくなるように魅力的という意味だろうか、人に対して使われることもあるが、結構いやらしい表現にあたる。
南アフリカ以外の英語圏で lekker は通じないことが多いだろう。そのため英単語と呼べるのか疑問かもしれないが、個人的にオックスフォード英語辞典に載っていれば英単語だと捉えている。そして lekker は informal, South African という但し書きが付いているが、オックスフォード英語辞典に掲載されている。