Kunststoffstopfen はドイツ語の文章を読んでいたら出会した単語で、意味は「プラスチック(製)の栓」と特筆するものではないが、口に出そうとすると難しい早口言葉のようで、最初の数回は噛んでしまった。3回 -st- があるうえ、音が結構似ている Stoff と Stopfen が続いているためだろう。ドイツ語に数多くある複合語の一例で、最初の Kunststoff が「プラスチック・合成樹脂」を指していて、続く Stopfen が「栓・蓋」という意味を持つ。また Kunststoff も Kunst と Stoff で成り立っている。
Kunst は「芸術・美術・学芸・技術・人工・技巧」で英語の art にあたる。そして Stoff は「物質・生地・題材」や口語で「酒・麻薬」を表す。独単語の名詞 Stoff は、英単語の「もの・持ち物・素質」や口語で「酒・麻薬」そして米語で「変化球」を指す名詞 stuff に似ている。独英両単語 (Stoff / stuff) の語源は共通して古フランス語の estoffe / estophe で布などの「生地」という意味。現在のフランス語でも「生地・地質」という単語は étoffe で、英単語 fabric にあたる。アカデミー・フランセーズによれば名詞 estoffe / estophe は動詞 estoffer から派生したもの。その estoffer の語源は古オランダ語 (Oudnederlands / Old Dutch) とも古低フランク語 (Altniederfränkisch / ancien bas francique / Old Low Franconian) とも呼ばれる言語の stopfôn だ。ドイツ語の名詞 Stopfen と動詞 stopfen の語源は古高ドイツ語 (Althochdeutsch / Old High German) の stopfōn という。もし古オランダ語・古低フランク語 stopfôn と古高ドイツ語 stopfōn が同じであれば、ドイツ語の単語 Stoff と stopfen / Stopfen の語源は同じになる。そう考えると英語の「もの・持ち物・素質・酒・麻薬・変化球」という名詞と「詰める・詰め込む・満腹になるまで食べさせる・投票箱に不正票を大量に入れる」そして良い子は使わないであろうかなり卑猥な意味をも持つ動詞 stuff が、ドイツ語の「物質・生地・題材・酒・麻薬」を指す名詞 Stoff と「繕う・詰める・押し込む・塞ぐ・拳や弱音器で楽器の音を弱める・口いっぱいに頬張る」などを表現する動詞 stopfen の両方にあたり、同じ stuff なのに名詞と動詞で定義に結構な差があるのも頷ける。