空港や駅で出発する飛行機や列車の行き先の一覧を見るのが楽しい。なぜかわくわくする。写真は2024年6月22日にチューリッヒ空港で撮影した出発便の一覧。
色々な所へ飛行機が飛び立っている。
行き先を眺めていて「面白いな」と思ったことがあった。都市名は言語によって変わる。例えば英国のロンドンは英語で London だが、フランス語で Londres というように。スイス連邦憲法第4条で公用語がドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語と明記されていることはよく知られているだろうか。しかしそれはスイス連邦レベルでの話。チューリッヒはドイツ語圏。チューリッヒ州憲法第48条で公用語 (Amtssprache) はドイツ語と定められている。空港の案内などを見ても独英の2言語表記で、フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の表記は見当たらなかった。書き言葉としてのドイツ語は標準あるいは高地ドイツ語 (Standarddeutsch / Hochdeutsch) だが、話し言葉としてはスイス・ドイツ語 (Schweizerdeutsch) が一般的に使われる。スイス・ドイツ語は他のドイツ語圏の人でも分からないことが多い。ドイツ語話者同士のはずなのに、スイス・ドイツ語が聞き取れず英語で会話するというのは冗談の話だけではないよう。スイス・ドイツ語話者も一般的に標準・高地ドイツ語を話すことができるが、意識的に切り替える必要あるらしい。日本で日常生活で方言を話す人が、他の地域から来た人との意思疎通を図るために、共通語を強く意識して話すということに似ているかもしれない。少し話が逸れてしまったが、行き先の表示を見て、大体の法則を見いだせた。ドイツ語圏(ドイツ・オーストリア)の行き先であればドイツ語の地名、イタリアの行き先であればイタリア語の地名、それ以外は英語の地名。オーストリア・ウィーンはドイツ語の Wien と表示されている。なおデュッセルドルフ Düsseldorf は ü でも ue でもなく Dusseldorf なのはなぜだろうか。この拡大写真にはないが、ミュンヘンは Muenchen だったのでなおさら不思議。イタリアの都市名ローマ・フィレンツェ・ヴェネツィア (Roma, Firenze, Venezia) はイタリア語。ドイツ語ならば Rom, Florenz, Venedig になる。拡大写真にはないが、ナポリもイタリア語 Napoli でドイツ語 Neapel ではなかった。デンマークの首都コペンハーゲンは英語の Copenhagen で、デンマーク語 København でもドイツ語 Kopenhagen でもなかった。興味深いのはブリュッセル。英語の Brussels になっていて、フランス語 Bruxelles ではなかった。ブリュッセルはフランス語とオランダ語両方が公用語なので、英語になったのだろうか。
いつまでも見入ってしまうところだったが、我に返って保安検査に進んだ。