仮想通貨取引所「コインチェック」から約580億円分の仮想通貨「NEM」が流出した。端的に言うと「盗まれた」ということ。それにしても凄い金額である。1万円札で1億円(1万枚)は約10キログラムだという。つまり盗まれた額は、1万円札でおよそ5800キログラム分となる。どう考えても、紙幣でこれだけの額を少人数で盗むのには無理がある。重さだけではなく嵩張るので、運ぶのは面倒だろうし、大体一箇所にそんな金額の紙幣が保管されているとも思えない。もし強盗におよぶなら、綿密な下準備を行い計画を練って、実際にお金が保管されているところに侵入しなければならない。今回の事件では短時間に不正にアクセスされて盗まれたというし、犯人がどこにいるのかもわからない。
価値のあるものであれば、盗もうとする人がいるのは、十分に予見可能。盗品は紙幣かもしれないし、金塊かもしれないし、巨匠の絵画かもしれないし、仮想通貨かもしれない。ゆえに価値あるものを保管する者は、銀行にしろ美術館にしろ仮想通貨取引所にしろ、常に防犯を意識しなければならない。盗まれたら必然対策が不十分だったということになるが、どうもこの取引所では危険を軽視しがちで、防犯体制が杜撰だったようだ。
流出した顧客約26万人分の仮想通貨は日本円に換算して補償するという。その額約463億円。これもまた大きな金額である。仮想通貨取引所は返金に自己資金を充てるというが、経済学や経営学には疎いので、このような規模の会社がそのような額の現金預金を持っていることが一般的なのかよくわからない。大金を事業に使わずにそのまま寝かせるというのは、どうも奇異に映る。また現在日本円を出金できない状態にあるという。これでは顧客が心配して取り付け騒ぎに似た状況が起きてもおかしくないだろう。法律や会計についても無知なので、間違っているかもしれないし、書いているうちに自分でも混乱しそうだが、一般的に仮想通貨「取引所」の顧客は取引所が保有し証券化した仮想通貨の債券を買ったり投資信託をしたわけではなく、取引所にある仮想通貨を保有していて取引を実際に完結していて、一方の取引所は顧客の保有する仮想通貨を保管し取引・送金・入出金などを取り次いだり可能にする代理の立場で、「取引所」としての主な収入源は顧客の仮想通貨の取引・送金および仮想通貨・法定通貨の換金と入出金にかける手数料に依るものと理解している。取引所自体が当事者として仮想通貨市場で取引する場合は、顧客の資産とは全く別に管理されているはず。もし補償額を全額直ぐに出せるようならば、ものすごい収益性であり、手数料が非常に高かったのではないかという疑問も生じる。そうでなければ自己資産を仮想通貨の投機で増やしたのだろうか。いくら乱高下があった仮想通貨市場でも、自己資産から不正に流出した顧客の資産を全額補填できるような額の利益を出すのは、非常に難しいのではないだろうか。
今回の件は、仮想通貨が投機の対象だけではなく汎く使われる通貨・決済手段として普及するには、しっかりとした制度が必要であることを示したのかもしれない。