今年2021年、ドイツの16州のうち6州で州議会選挙、そして連邦議会選挙が行われる。そのためドイツで Superwahljahr と呼ばれている。ドイツ語らしい複合語で super 「大」 Wahl 「選挙」 Jahr 「年」からなっている。2日前の3月14日にラインラント=プファルツ州とバーデン=ヴュルテンベルク州で州議会選挙があって、今後6月6日にザクセン=アンハルト州、9月26日に連邦議会選挙とともにメクレンブルク=フォアポンメルン州・ベルリン・テューリンゲン州の各州議会選挙が行われる。
ラインラント=プファルツ州・バーデン=ヴュルテンベルク州の選挙結果で共通するのは、同盟90/緑の党の躍進とCDUキリスト教民主同盟および極右政党AfDドイツのための選択肢の後退。CDUの敗北が大きなニュースになっているが、個人的にはAfDの勢力が削がれたことに安心している。単に「緑の党」とよく呼ばれる同盟90/緑の党は両州議会で与党だったが票を伸ばした。ドイツでは政党に色を割り当てて連立を表現する。緑の党はもちろん緑、CDUキリスト教民主同盟・CSUキリスト社会同盟は黒、SPD社会民主党は赤、FDP自由民主党は黄色というように。この2州では得票率5%以下で議席はないが、左翼党は色として表す場合はSPDと区別するために紫に近い色が選ばれるが、言葉だと「赤」である。そのためSPDと左翼党が連立するとなれば赤赤 (rot-rot) になる。前回の州選挙後ラインラント=プファルツ州で緑の党は議会最大勢力のSPDとFDPともに「信号連立」を組んでいた。バーデン=ヴュルテンベルク州では第1党で州首相を擁してCDUと「緑黒連立」を組んでいた。両州で引き続いて政権の一端を担うことになるだろう。
今回の州議会選挙は秋の連邦議会選挙の前哨戦と位置づけられて、CDU・CSUの首相候補が誰になるのか、これから駆け引きがあるだろう。ひとつ明らかなのは、連邦議会選挙がどのような結果になっても、メルケル氏以外の人物がドイツの首相になること。メルケル氏が首相に就任したのは2005年。米国・GWブッシュ大統領、英国・ブレア首相、フランス・シラク大統領、日本・小泉首相の時代だった。もうかなり昔のように思える。第2次世界大戦後、西ドイツそして再統一後のドイツで首相を努めたのは8人。1990年の再統一からだとたったの3人である。メルケル氏はその半分以上の期間にわたって首相の座に。ドイツとヨーロッパは大きな安定した存在を失うことになる。