2022年2月24日、ロシアがウクライナ侵攻を開始した。全面戦争。今日が4日目にあたる。
実際にロシアが軍事行動を起こすとは思っていなかった。武力行使は目的達成の手段。そして目的達成のために一番良い手段なのかが不明だった。そもそもロシアというかプーチン大統領の目的とは何なのかという疑問が残る。ウクライナがNATOに絶対に加盟しないという確約だけを求めているわけではない。ウクライナをロシアの勢力圏・影響圏に置くのに留まらず、完全な属国にするのが目的の模様。またプーチン大統領の野心はウクライナのみだろうか。もしロシア帝国あるいは旧ソ連の版図を再構築しようとしているのであれば、次はバルト三国が標的になる。
情報機関は通常得た情報や行った分析を明らかにしない。公開しても核心ではない一部だったり、撹乱のために偽情報だったりする。正確な情報を流すのは、戦略的や外交的に相手に圧力をかけられる場合だろう。基本的にどれだけ相手の事を把握しているか、手の内を見せることは戦術的に避けたい。しかし今回西側の情報機関はロシアの偽情報作戦に対抗する情報戦の一環としてだろうか、プーチン大統領が何を企てどのように作戦を展開するかを事前に公表していた。そしてほぼその通りになっている。空爆で制空権を握り、空港を確保して特殊部隊を送り込みキエフというかウクライナの国家の中枢の制圧を試みると同時に、大軍がウクライナの北・北東・東・南から一気に進撃するというもの。キエフを制圧することによって傀儡政権を樹立し、何方面を守らないといけないウクライナ正規軍を個別に撃破あるいは包囲して降伏に追い込む。ロシア軍が作戦を変更しなかったのは、兵備の圧倒的優位に自信があって、作戦通りに行動することによっていかに軍事的に強いかを誇示できるためか。でもウクライナ軍が予想以上に善戦していて、ロシア軍は制空権を完全に掌握しているわけでも都市を占領したわけでもなく、作戦通りの展開とはなっていない。
歴史は繰り返さないという信念だが、どうしても過去に前例や類例を見出したくなる。ロシアはジョージアと戦争をしたり、シリアに介入したりしてきたが、これほど大々的に地上軍を派遣したのは第2次チェチェン紛争以来で、今回の動員数は遥かに大きい。戦争になると正確な情報を得るのが難しくなるが、ウクライナ軍は祖国防衛戦争ということもあって士気が高く、ロシア軍の猛攻に耐えているのみならず反撃にも出ているらしい。ロシア軍の損害は大きいようだ。ウクライナ当局の発表したロシア軍の損害数千人規模が正しければ大損害であり、これから市街戦も行うとなれば、ロシアの最近の軍事史で似た例は第1次チェチェン紛争なのではないか。至近距離での市街戦になれば、ロシア軍は苦戦して士気が下がるだろうし、占領している地域が小さければ、兵站の維持が困難になる。ロシア軍の武器と特殊部隊や精鋭部隊は強いが、一般兵の質と士気はどのようなものだろうか。
西側諸国はロシアと直接干戈を交えるつもりはないが、ウクライナへ武器や物資を次々と送っているし、制裁もどんどん強化されている。間に合うかどうか分からない。この戦争はプーチン大統領が仕掛けたものであり、彼の頭の中にある目的が何であれ、勝利条件であるその目的を達成できなければ、プーチン大統領の負けとなる。プーチン大統領が勝つためにどのような犠牲も厭わないとしたら、夥しい人命が失われることになる。この戦争は長引けば長引くほどプーチン大統領にとって不利な状況になるだろう。戦線が膠着し、ロシア軍の損害が大きくなり、経済制裁の効果が顕著になれば、ロシア国内の世論も変わるだろう。