戦争とは政治的目的を達成するための手段であり、いつかは外交によって条約が結ばれたり、両側とも疲弊して戦意が失せて膠着状態になって終わるもの。戦争に「勝った」かどうかは目的を達成したか否かで決まる。
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した際、目的はウクライナ政府の転覆でウクライナ全土の属国化だっただろう。ロシアの当初の目的はどう考えても達成できないので、基準をそこに置けばロシアはすでに負けたと言っても良いだろう。ただ最初の目的が達成ができなかったから、ロシアの「敗北」でウクライナの「勝利」ではない。ロシアはウクライナ国土の一部を依然占領している。ウクライナの目的はロシアに占領されている全領土の回復。ドンバス地方とクリミア半島も含まれる。ウクライナの勝利条件を全領土回復と定義した場合、ウクライナはこれから勝てるだろうか。
情報は錯綜しているが、ウクライナ軍が南部戦線でロシア軍の第1防衛線を突破し、第2防衛線での攻防が続いている模様。ロシア軍は戦術的反撃を試みても戦略的反攻をする余力はないように映る。私は軍事に疎いが、一般論としてこのような防衛線に依る時、一箇所突破されると、防衛側は様々な選択を迫られることになる。防衛線奪還のために犠牲覚悟で有限の軍資を注ぎ込み反撃するのか、他の戦線で攻勢に出るのか、それとも包囲されたり孤立する危険性に陥ったり兵站が維持できないような不利な位置にある部隊は撤退させて戦線を縮小して守りに徹するのか。
ウクライナは西側諸国の外交的軍事的支援に頼っているところが大きい。もし今年内にウクライナ軍が現在ロシアによって占領されている地域の多くを解放することができれば、全領土回復まで西側諸国の支持と支援は続くだろう。
今後の戦況がどうなるのか、様々な意見がある。第1防衛線が維持できなければロシア軍は士気が下がり戦意を喪失してあっさりと瓦解するという見方をする人もいれば、強固な第2第3防衛線を突破しなければならないウクライナ軍はそのうちに疲弊して膠着状態になると予想する人もいる。私には分からないが、前者であってほしいところ