フジテレビ第三者委員会調査報告書

フジテレビと中居正広の件だが、短期間で強制的な調査権限を持たない委員会が十分な調査を行い

2023 年 6 月 2 日に女性 A が中居氏のマンションの部屋に入ってから退室するまでの間に起きたこと(本事案)について、女性 A が中居氏によって性暴力による被害を受け

(調査報告書公表版27頁)

中居氏と女性 A の関係性、両者の権力格差、 CX (株式会社フジテレビジョン)におけるタレントと社員との会食をめぐる業務実態などから、本事案は、 CX の「業務の延長線上」における性暴力であった

(同上54頁)

と認定した。

中居は

守秘義務の範囲内の事項についてはヒアリングに応じないとし、当委員会に対しして女性 A の守秘義務を解除しない旨を回答

(同上26頁)

おそらく中居は守秘義務範囲内についてのヒアリングにも守秘義務解除にも応じられなかった。それというのも、守秘義務の対象となっている2023年6月2日に女性Aが中居のマンションの部屋に入ってから退室するまでの事実が、明らかな犯罪か極めて強い犯罪性が疑われるもので、相手の守秘義務を解くと己の犯罪行為が明るみになって、刑事責任を追及される蓋然性があるから。自己負罪を避けるあるいは拒否する権利は誰もが持ち合わせている。それゆえこの点に関しては強制的な調査権限を有する機関が動き、中居は起訴され司法の場で裁かれるべきだ。

調査報告書を一読したところ、どうしたらほぼ一貫して経営者としてまた人として間違った判断を下せるのか、フジテレビは「組織は頭から腐る」を具現した会社だったことが浮き彫りになった。失敗する組織の本質は似ているものかもしれない。無能な上層部と経営体制・企業統治体制の脆弱性は非常に危険な組み合わせ。報告書はセンセーショナルな文言を使っていないがため、批判がより痛烈だ。

本事案の対応方針について意思決定する経営トップ、役員、幹部は、事実確認、リスクの検討、性暴力被害者支援と人権尊重責任の視点でのケアと救済を行うなどの適正な経営判断を行うための知識、意識、能力が不足していた。

(同上61頁)

被害者の声にも産業医や心療内科医やアナウンス室部長など被害者に近かった現場の声にも耳を傾けようとせず、無能と思い込みと決めつけと保身と不信で、プライベートの男女問題と判断し、勝手に何が被害者にとって良いのかあるいは被害者が求めている(だろう)ものを決めて、行動していた。それが二次加害行為に繋がった。

また会社として社員を守るどころか

本事案への一連の対応において特筆すべきことは、CX の幹部(BとJ)が、中居氏サイドに立ち、中居氏の利益のために動いたことである。

(同上60頁)

会社は大物タレント中居を守り、自分を守ってくれない。被害者が疎外感絶望感を覚えたのは必然だった。

報告書は他に類似事例があったことを認定した。フジテレビに人権侵害が起こりやすい社風・土壌があった。風通しの良くない職場だった。

経営陣・幹部の完全な刷新と過去との決別は必須だろう。フジテレビの救いは

ステークホルダーへの説明責任に向き合おうとしない経営陣に対して、敢然と反旗を翻した数多くの社員がいたことである。

(同上267頁)

そんな社員が報われるような改革を推し進め、中身を本質的に変え、社会的信用を回復するのは、簡単ではなく、一朝一夕に成し遂げられるようなものではないが、フジテレビが何らかの形で生き延びる道は他にない。