2015〜2016年プレミア・リーグ

レスター・シティ優勝

レスター・シティがイングランドのプレミア・リーグ優勝という「偉業」を達成した。2015〜2016年は、これから永く語り継づけられるシーズンとなるだろう。

昨シーズンのレスター・シティは、長い間降格圏内にいた。最下位だった時期も。そのため降格を免れて最終的に14位となったのが、奇跡だと言われた。今シーズン良いスタートを切ったものの、いつかは失速するだろうと思われていたし、多くの評論家は今季降格する3チームの内の1チームと見ていた。ラニエリ監督も「人柄は文句無しに良いが、監督しての手腕は⋯⋯」というのが、専らの評価だった。

例えば今季の折り返し地点である第18節で首位であっても、その内に息が切れるだろうと予想されていた。選手には好調・不調の波がつきものだし、怪我で主力選手を失ったらトップ争いに残ることは無理で、いずれ金銭的に裕福で選手層の厚いチームに追い越されるだろうと言われつづけた。一発勝負の連続であるトーナメントではなく、38節を通して争うリーグを制するのには、運だけではなく実力に持続力が必要。

しかし、レスター・シティは勝ちつづけたし、負けなかった。他のトップ・チームとの対戦成績を見ると、トッテナムとマンチェスター・シティ相手に1勝1分、マンチェスター・ユナイテッドとは2分で、アーセナルには例外的に2敗。まだ残り2試合あるが、これまでリーグで負けた対戦相手はアーセナル以外にリバプールのみ。いかに勝負強かったかを物語っている。

更にレスター・シティの強さを物語る一面は、1対0で勝った試合数。その数7。そして他に無失点の試合が7試合だったこと。当たり前のことだが、サッカーは点を取られることがなければ負けないゲーム。シーズン最初の9試合は相手の得点を許していたのだから、このように上手く守備体制を築けたのが優勝要因の一つだろう。殊に素早く一致団結したカウンター攻撃が特徴のレスター・シティにとって、ボールを持たない間の守備が重要なはず。

プレミア・リーグの試合中継は有料テレビが放映権を握っているので、観ることはなかったが、公共放送BBCで放送されるダイジェストは時々観ていて、レスター・シティの選手の連携というか結束の固さは伝わってきた。個々の能力では、他のチーム所属の選手と比べれば、劣るところは否めないだろう。スポーツの世界は実力主義であり、選手の力量は移籍金や年俸つまりは金額という非常に明らかな物差しで測られる。でもチーム・スポーツそして組織では、一人一人の才能をどうやって引き出して融合させるかが成功の鍵となる。ラニエリ監督は安定した力強いチームを編み出すことを成し遂げた。

これから数日間、英国ではレスター・シティで持ち切りとなるだろう。

ちなみに賭博屋は大損となった。シーズン前にレスター・シティのリーグ優勝に賭けたら、オッズは5000倍という数字だった。