天才という言葉は安易に使われすぎていると思うときがある。でも羽生結弦選手は紛れなく本当の天才だろう。怪我からの復帰の場であった五輪で、66年間他の選手が為しえなかったフィギュア・スケート男子の2大会連続金メダルを有言実行。ただ鮮やかに跳び美しく滑り眩しく回転する姿に感嘆するのみで、フィギュア・スケートについてあれこれ言える知識はないが、スポーツにおいては体で覚えている感触というか感覚が非常に大切だと思う。だから怪我で練習から遠ざかっていたスポーツ選手が、短期間にこのように最高水準まで戻れるというのは驚異のことではないだろうか。それも多くの秀でた選手がいる種目で。
ただし「天才だからできた」と簡単に理由付けるのはいくらなんでも失礼だろう。他人には想像できないほどの並々ならぬ努力があったはず。そしてこの五輪にて羽生選手ほど注目されて多くの人の期待を一身に背負った日本人選手はいなかっただろう。期待は重圧ともなりかねないが、期待をエネルギーに変えたようにも見えた。素晴らしい精神力。しかもこれで終わりではない。まだ次の目標があり、4回転半ジャンプを目指すと言う。将来を見据えて邁進する姿は輝かしい。
氷上のスケーターとしての能力だけではなく、気配り上手、そして記者会見の場などで的確な言葉で表現する力を持ち合わせている羽生選手は、やはり「天才」だ。