2022年男子サッカーW杯・雑感・2

もしW杯が始まる前に誰かが日本がドイツとスペインに勝ってコスタリカに負けるなどと言っていたら

「何を寝惚けたことを⋯⋯。近くのブックメーカーで100ポンド賭けてこい」

とでも返しただろう。これらの結果に賭けていたら今頃大金持ちだ。日本がスペインに勝てるとは考えていなかった。コスタリカに負けて千載一遇の好機を逃したと思ったし、ドイツ対スペインの試合が引き分けに終わって、日本の16強進出は非常に難しくなったと予想していた。日本とスペインが引き分けてドイツがコスタリカに勝つと日本とドイツが勝点4で並び、得失点差と総得点数が同じであれば直接対決を制しているので日本が16強進出することになっていたが、ドイツがコスタリカに2点差をつけて勝って得失点差で優位になって16強進出の可能性を考えると、日本はスペインに勝つ必要があった。引き分けではなく勝ちにいく意識がどれだけ重要だっただろうか。競技なので究極的に全て結果論になる。強いチームというのはどんな形であれ勝つチームのこと。今回の日本代表にはこれまでにはなかった強かさがある。まず1点先制されても逆転する力。そして逆転後のリードを守り切る力。守る時は守る、詰める時は詰める、攻める時は攻める、そのメリハリが非常にしっかりはっきりしていた。ドイツそしてスペインとの試合で一番危うかったのは、ドイツとの試合の前半だったと思う。それ以外での守備はかなりまとまっていたように見えた。テレビだと見えづらいところがあるが、守備体制の各選手の位置と空間認識能力は良かったし、ゴール近くあるいは得点機になりそうな場所でファウルをしなかった。コスタリカとの対戦で浮き彫りになった課題は、ボールを保持して能動的流動的にどのように相手の守備を崩せるかというところ。

次に日本が対戦するクロアチアは、個人的に好きな代表で2018年W杯決勝で勝ってほしかったが、いわゆる「黄金期」は過ぎたのかもしれないと思っている。中盤の強さは健在だが、得点の主力だった Mario Mandžukić 選手や攻撃で頻繁に要となっていた Ivan Rakitić 選手が引退して、決定力不足に悩んでいる印象がある。昨年行われた「2020年」欧州選手権グループ・ステージでは初戦イングランドを相手に0:1で負け、第2戦のチェコとの試合は1:1と引き分けて、第3戦でスコットランドを3:1で下して、16強に進出したが、延長戦の末にスペインに3:5で敗れている。90分だけで見れば1:3とリードされていたころ、終盤に2得点して追いついたしぶといチーム。今回のW杯グループ・ステージでカナダを4:1で下したが、モロッコとベルギーとの対戦は0:0の引き分けだった。2018年W杯準優勝のチームと比べると鋭さと速さが落ちているという感想。ただベルギーほどではない。3試合で失点が1というのは守備が固いことを物語っているし、守備が脆弱であればすぐに付け込む一瞬たりとも油断できないチームだが、日本に勝機は十分ある。楽しみにしているのは日本とクロアチアがどのような作戦に出るか。球を保持して試合の流れの主導権を握ろうとするのか、それとも相手を自陣に引き込んでカウンターの機会を狙うのか。

私はまだ世代としてサッカーと言えばブラジルと連想してもおかしくないが、若い人たちにとってブラジルは本当に強い代表なのかという疑問があってもおかしくないような気がする。ブラジルが直近でW杯優勝を飾ったのは日韓共同開催の2002年。それ以降はヨーロッパの代表が優勝している。2006年イタリア、2010年スペイン、2014年ドイツ、2018年フランスというように。W杯のみならず欧州選手権そして欧州の各国リーグで見慣れているせいだろうが、ヨーロッパのチームは身近。予想というのは大体外れるものだが、これまでの試合を観ていてフランスが連覇する可能性が高まったような気がする。ゴールを決められる選手が何人も揃っているため攻撃の戦術も多彩で、守備も安定している。もしフランス代表選手で一番好きな選手を挙げるとしれば、怪我で今回出場していない N’Golo Kanté 選手だ。もし彼が出場していたら、中盤が更に安定してもっと声高くフランス優勝の可能性を説いていただろうか。

英国時間午後3時開始のオランダ対米国が楽しみだ。