ヨーロッパの国でもかなり知名度が低いのがベラルーシ。そして知られているとすれば、「ヨーロッパ最後の独裁国家」と呼ばれていること。1994年から政権を握っているルカシェンコ大統領が最近の大統領選挙で再選された。果たして公正だったのか疑問の残る投票、そして選挙結果後には反対者のデモがかなり暴力的な方法で鎮圧されたこともあり、ニュースにも短く登場した。
ルカシェンコ氏の政治と経済思想は旧ソ連のものに似ている。そのため、ベラルーシ人の多くが公営企業に雇われていて失業率が低く、物価も税金があまり課されていなくガスも長期間に渡って安価でロシアから売ってもらったこともあり比較的低く、ルカシェンコ氏の体制を支持する人も多い。隣国のロシアやウクライナが経済混乱や政治的な国内対立に陥っていた1990年代後半にどちらかといえばベラルーシが安定したのも評価されている。一時はロシアとの関係がギクシャクしたが、最近修復されたので、ガス供給が停止されるような事態にはならないと報道されている。
もちろん独裁国家と呼ばれるには、秘密警察に頼ったり、表現の自由を束縛していることがある。実際にベラルーシに住んでいたことのある人と話したとき、反体制の立場の人々は常に当局の監視の目を意識していたと語った。そして拘束されることや嫌がらせのような家宅捜索もしばしば。個人だけではなく、家族も監視対象になったりしていたという。このような独裁国家というのは、「監視されているぞ」と徐々に人々を萎縮させ、自分から活動を辞めるように追い詰めていくのだろうか。
独裁国家が長く続くのは、支持者が多くいるケースもあれば、圧倒的な武力を用いて反対する人々を粛清する場合もあるし、また反対する人々にまとまりがない場合がある。ベラルーシの場合、現体制を支持する一定の層もあるし、監視体制もあるが、反対する人々にまとまりがない。民主化を求める運動をする人もいれば、ベラルーシ・ナショナリストと呼べそうな極右主義者もいるので、反対勢力がバラバラとなってしまう。独裁者は嫌いだが、だからといって主義主張の違う人を独裁者に選挙で勝つために支持するということもない。
さて、ルカシェンコ大統領体制がすぐに崩壊するように見えない、今後のベラルーシはどのようになるだろうか。