11月の半ばを過ぎた激動の2011年、中東情勢はまさに複雑怪奇。選挙のあったチュニジアを除き、まだまだ他の国々では政情が不安定なままで、これから何が起こるのか予測できない状態。思いつくままに現況を短く纏めておく。
シリア
リビアの陰に隠れていたシリアだが、政府による弾圧と反政府勢力による抵抗双方が激化している模様。アラブ連盟と隣国トルコがアサド政権に外交的圧力をかけているが、直接介入するまでには至らないという見方が強い。西側諸国も経済制裁を強化しているが、軍事的に介入するとは現在思われていない。そのため、このまま情勢が悪化する可能性が高い。組織的反政府勢力がなければ介入はないので、アサド政権は介入の芽を摘むために弾圧を強化するだろう。逆に長引けば、外交圧力がじわじわと効いてくるかもしれない。いずれにせよ、大規模な流血が続くことが恐れられる。
イラン
核開発問題で西側諸国が対イラン経済制裁を強化している。一部囁かれているのが、イスラエルによる軍事行動。可能性としてはあるだろうが、これはかなり危険な選択であり、西側諸国も軍事行為に関しては二の足を踏むだろう。そして可能な軍事行動、つまり空爆のみで、果たしてイラン国内の複数箇所に分散されている核施設を破壊できるのか、疑問が残る。
エジプト
ムバラク政権後、どのような国となるのかまだ不透明。革命とは多くの場合、一回だけ起こるのではなく、数回連鎖して起こることが多い。最初の革命では旧政権が打倒されるが、続く革命は新政権の形を巡って起こる。最終的に、軍事政権となるのか、イスラム色の強い政権となるのか、世俗政権となるのか、独裁政権となるのか、それとも民主的国家となるのか、将来のエジプト像を予想するのは難しい。
リビア
旧体制の中枢にいた人々が捕らえられるなど、まだ内戦の戦後処理が続いているリビア。今後、求心力ある政権ができるだろうか。
イスラエル
アラブ各国での革命や動乱はイスラエルにとっては危険性を伴うところがある。何せアラブ諸国で鮮明な反イスラエル政権が民主的に選ばれる可能性が充分にあるから。そしてパレスチナ問題に解決の糸口はなく、八方塞がりの様相。明確な長期安全保障戦略もあまり見当たらない。これから兵器の性能はますます高くなり、南レバノンのヒズボラ、あるいはガザ地区のハマスからの攻撃の脅威も増すだろう。本当の安全保障はパレスチナ問題解決によってしか得られないのではないだろうか。
トルコ
シリアとイランを隣国とし、NATO 加盟国でもあり、悪化したとはいえイスラエルとの外交パイプを持つトルコは、今後中東に於いて非常に重要な役割を果たすだろう。現にシリア情勢に関しては今のところ一番の存在感を示している。ただどれだけの影響力を行使できるかは未知数。
今後の展望
楽観的であれば中東の民主化と経済発展が進むと思えるが、悲観的であれば今後混乱と紛争が続くと思える。さてどちらがより正しいだろうか。