シリアとイラン

2011年は中東・北アフリカ激動の年だった。チュニジアやエジプトで、長く続いた政権が打倒され、リビアでは内戦の末、カダフィ政権が倒された。これから、これらの国々で、どのような展開となるのか不明だが、国際社会の関心は、現在シリアとイランに移っている。この2カ国は、それぞれ違う理由で、関心の対象となっている。

シリアでは報道規制もあり、実際に国内で何が起きているのか、外部には分からないところが多い。果たして政府は、軍部そしてシリア全土を掌握しているのだろうか。何らかの政治的合意がなければ、反政府勢力はさらなる武装抵抗に訴えるだろう。政治的合意は、アサド政権の終わりを意味するだろうから、政府側が譲歩するとも思えない。一方、政府には徹底的に弾圧する意志があるかも不明。このまま、事実上の内戦状態となれば、西側諸国は対応に苦慮するだろう。以前にも書いたことだが、軍事的介入は、国連安保理で中露の反対もあり、また必要とされる軍事力の規模からしても、おそらく無いだろう。しかし、昨年の最初の数カ月、リビアに軍事的に介入することはないだろうと思っていたので、これも間違いかもしれない。

イランは内紛状態といったようなわけではなく、最近の行動は対外的示威行動という意味合いが強い。主要仮想敵国は米国とイスラエル。イラン国内規制をも狙ったことだろうが、西側諸国の経済制裁に対する反発、そして核開発継続を示す行為だろうか。イランには譲歩する気配はなく、時間があればあるほど、核兵器とミサイル技術の完成に近づき、イラン有利という構図。経済制裁のみで譲歩を引き出すことはできないだろう。特にイスラエルにとって、イランが核保有国となるのは悪夢。空爆などの軍事行動もありうるだろうが、核開発を遅らせることはできても、止めることはできないのではないだろうか。

人種・宗教・宗派の間の対立が深まっているイラクの例もあるし、エジプトはこれからどのような道程を辿るのか不明であり、現在のシリアとイランという不安定要素を抱える中東から、今後ますます目を離すことはできない。