映画短評 | American Hustle

評判の高い映画『アメリカン・ハッスル』を友人とともに数日前観賞した。笑いあり、演技ありで、確かに面白かったので、ロンドン都心部の映画館に行った価値はあった。しかし、映画史に残るような大作であったかどうか、それは現時点では何とも言えない。

捕まえた詐欺師のカップルを、FBIが身柄の自由と引き換えにオトリとして利用し、カジノ利権を巡る政治家の汚職を追及するという話。しかし、FBIの担当捜査官は危険を冒してでもどんどんと大物を狙おうとするし、一方でプロの詐欺師たちは引きどころが分からないFBI捜査官の方法に身の危険を感じるようになったりと、そのうち誰が何のために誰を騙しているのか、だんだん分からなくなってくる。そして登場人物それぞれの関係も複雑。一癖も二癖もある登場人物は、下手をすればあまりにも荒唐無稽となってしまうところだが、適材適所というか、各役があたっていて、人間としての真実味があったため、ストーリーも良く構築されていた。

騙すというのは、人間の誰にでもある弱点あるいは欲に付け込むこと。そして、人間にはほんの少しだけかもしれないが、騙されてみたいという変な願望があるような気がする。そのため、現実世界で実際に騙されてしまうのはもちろん悔しく厭なことだが、映画という媒体で人が人を騙す姿を観るのは、一種の快感なのかもしれない。