読書日記 | The Smell of the Continent

2011年8月18日

Richard Mullen & James Munson

The Smell of the Continent: The British Discover Europe

London (Macmillan), 2009

ISBN: 978-0-330-44873-4

今日も多くの人々が、飛行機や電車に乗って移動しホテルに泊まって、旅行を楽しんでいることだろう。ガイドブック片手に個人旅行やパッケージ旅行など形も様々。そして数週間旅行する人もいれば、1泊2日という形態もある。

この本を読むと、なるほど現在の旅行業界の礎を築いたのは19世紀の英国だったと思える。ナポレオン戦争の終結で終わった「第2次百年戦争」のあと、多くの英国人がヨーロッパ旅行に出かけた。17世紀や18世紀の貴族の子弟が長期間ヨーロッパを回ったグランド・ツアーとは違い、19世紀は英国人によるヨーロッパ旅行の大衆化の世紀でもあった。この大衆化を支えたのが、ヴィクトリア朝の英国の経済繁栄、そして蒸気。鉄道と蒸気船によってヨーロッパ大陸は近くなった。コストを抑えた手頃なパッケージ・ツアーが売り出され、ガイドブックも出版された。また、旅行先で一定の水準の宿泊施設を求める英国人を相手にするために、ヨーロッパ各地のホテルはだんだんとサービスを改善。今でも街の中心にある大きなホテルは19世紀後半に建てられたのが多い。

今は蒸気ではなく、格安航空会社などを利用したり、豪華客船に乗ったり、また世界の隅々に行ったりと19世紀と比べ、交通手段も行き先も多様化しているが、英国人の多くが旅行好きということに変わりはない。